円高の要因2 米経常収支 急速に拡大する貿易赤字 恒常的なドル安の圧力に=佐々木融
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昨年5月以降、米ドルが下落(ドル安)基調をたどっている背景にはさまざまな要因があるが、そのうちの一つが米国の経常赤字だ。こう言うと「米国は過去30年ずっと経常赤字なのに、なぜ今経常赤字が急にドル安要因として材料視され始めるのか」との疑問を持つ向きもあると思われるので、やや細かく解説してみたい。
まず、米国の経常収支の構造を見ると、経常赤字よりその内訳項目である財の貿易赤字の方が大きい。例えば、昨年7~9月期の経常収支は1785億ドル(約18兆7000億円)の赤字だが、財の貿易収支は2456億ドルの赤字だ。サービス収支と第1次所得収支(対外金融債権・債務から生じる利子・配当など)が一定程度の黒字であるため、経常赤字は財の貿易赤字よりも小さくなっている。
四半期の財の貿易赤字が2456億ドルということは、世界の輸出企業が毎日約38億ドル程度の米ドルを為替市場で売っていることを意味する。単純に言えば、その日の米国への証券投資と直接投資が38億ドルを超えればその日の米ドルは上昇(ドル高)することになる。もちろん投機的な取引も需給に影響するが、基本的に投機的な取引は買ったら売り戻し、売ったら買い戻すため、四半期単位ではニュートラル(中立)と考えられる。
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週刊エコノミスト
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