鉄鉱石や銅地金の価格急騰が中国社会の不安定につながるワケ=李雪連
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商品市況高騰 原材料高が「世界の工場」直撃 価格転嫁できず中小は赤字に=李雪連
世界の景気回復に伴う需給逼迫(ひっぱく)と各国における金融緩和の影響で、資源やエネルギーなど国際商品価格全般に上昇圧力が増している。それが資源エネルギーを大量に輸入する「世界の工場」中国を直撃した。
中国の鉄鉱石と銅地金の輸入量は、世界の貿易量のうちそれぞれ7割、半分を占める。国際市況は年初から5月中旬のピーク時には鉄鉱石は5割以上、銅は3割以上上昇した。
中国における消費者物価上昇の一つの経路は、(1)旺盛な資源エネルギー輸入が国際商品市況を押し上げ、(2)製造に必要な原材料が広範囲にわたり値上がりして生産者物価(PPI)が上昇、(3)それが販売価格に転嫁されることで消費者物価(CPI)の上昇、という流れになる。
中国の5月のPPIは、資源高を受けて前年比プラス9・0%と2008年7〜8月に次ぐ過去2番目の高水準に上昇したが、CPIは同プラス1・3%と低水準のままだ(図1)。生産者物価上昇が消費者物価にうまくつながっていないと考えられる。
その要因としては主に2点が挙げられる。まず、PPI(資源エネルギー→原材料→加工製造)からCPI(消費者に販売)に至る経路で見ると、PPIの上昇は原材料の段階にとどまっており、過剰な生産能力を有する加工など川下の製造業がコスト高を出荷価格に転嫁できず、CPIへの伝播(でんぱ)が起きにくくなっていることがある。
さらに、原材料などの素材産業は国有大手企業が中心なのに対して、家電や設備製造などの川下の製造業は民間の中小企業が多く、川上の国有大手に対して値下げなどの価格交渉力がないに等しいことがある。
9万社が赤字
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