経済・企業

何と中国国営企業まで!過去最多ペースで増える社債デフォルト=神宮健

新型コロナ禍による景気悪化で地方政府の財政も厳しい (Bloomberg)
新型コロナ禍による景気悪化で地方政府の財政も厳しい (Bloomberg)

社債デフォルト 国有企業に波及し過去最高に 崩壊した「暗黙の元本保証」=神宮健

 中国では、社債(企業債、公司債、私募債、中期手形など)のデフォルト(債務不履行)が増加している。2020年のデフォルト金額は過去最多の約1492億元に上った。21年も1〜4月期だけで約660億元と、昨年同期を上回るペースで増えている(中央結算公司調べ)。

 14年に初めて社債デフォルトが発生して以降、15〜16年に政府が企業の過剰生産能力の調整やゾンビ企業の淘汰(とうた)などの改革に乗り出したほか、18年以降に金融リスク防止のため、特にシャドーバンキング(影の銀行)の解消に動いたことに伴い信用収縮が起き、民間企業を中心に社債デフォルトは常態化しつつあった。その中で、新型コロナウイルス禍による景気悪化が追い打ちをかけている。

 中国の債券市場全体(残高約115兆元、20年12月)の中で、社債市場は約30兆元。銀行間市場と証券取引所市場に二分される。社債の保有者を、銀行間市場分(約15兆元分)で見ると、約3分の2を資産運用商品(証券投資信託、銀行資産運用商品、企業年金など)が保有し、約5分の1を銀行本体が保有している。

 相次ぐ社債デフォルトにより、市場が当面の間、信用リスクに過度に敏感になり、金融市場が混乱する恐れがある。さらに、マクロベースで見た企業部門の資金調達にも影響が出る可能性もあり、景気への影響にも注意が必要だ。

進む地方政府の財政難

 最近のデフォルトの特徴として、大きく2点が挙げられる。

 第一に、地方の国有企業のデフォルト増加がある。統計により異なるが、20年はデフォルトした社債のうち、金額ベースで6割程度を国有企業が占めたとみられる。国有企業では15年から起き始めたが、20年が「国有企業デフォルト元年」と呼ばれるゆえんである。

 中でも、20年11月に起きた国有石炭会社の永城煤電集団の事例は、格付けが最上位のAAA(トリプルA)級であったこともあり注目された。デフォルトの直接的な理由は、コロナ禍や米中貿易摩擦の影響、石油価格変動による化学工業部門の損失拡大とされる。また、地方政府(河南省)…

残り1851文字(全文2751文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事