新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

経済・企業 脱炭素の落とし穴

「水素還元」実現に費用はどれだけ……鉄鋼業界の重すぎる負担=真田明

日本製鉄の東日本製鉄所鹿島地区(茨城県)。日鉄は2025年3月をめどに高炉1基の休止を決めた (Bloomberg)
日本製鉄の東日本製鉄所鹿島地区(茨城県)。日鉄は2025年3月をめどに高炉1基の休止を決めた (Bloomberg)

鉄鋼業界 暗中模索の「水素還元製鉄」 設備・研究開発の重たい負担=真田明

 鉄鋼業界は久々の好業績に沸いている。2022年3月期の連結純利益で、最大手の日本製鉄は2400億円、2位のJFEホールディングス(HD)は1300億円とそれぞれ予想する。両社とも3年ぶりの黒字を見込む。しかし一息つく間もなく鉄鋼大手には、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(炭素中立)」の高い壁が待ち受けている。

拡大はこちら

 鉄鋼大手は中核設備の高炉で、鉄鉱石から酸素を取り除く還元工程で石炭由来のコークスを使うため大量のCO2を排出する。3位の神戸製鋼所を含め大手各社は中期経営計画を今春に発表し、脱炭素への施策を示すことが迫られた(表)。日鉄は30年度にもCO2排出量を13年度比で30%削減、JFEは24年度に鉄鋼事業で同18%減、神鋼は30年度に同30〜40%減を目標に設定するとともに50年に炭素中立を目指すとしている。

脱「高炉」は困難

 業界期待の新技術の一つが、水素還元とCO2の分離・回収を複合した「COURSE(コース)50」。08年から鉄鋼大手が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け研究してきたプロジェクトで、石炭の代わりに水素を還元工程で利用する。ただ、同プロジェクトでは水素は補助的な投入量にとどまり、CO2排出削減は現状の30%が限界とされる。

 還元工程でCO2をまったく出さない完全な「水素還元製鉄」となると、ハードルは一気に上がる。COURSE50は製鉄所内で生じるコークス炉ガスから水素を活用する工程を取り入れている。水素を大…

残り830文字(全文1530文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事