廃プラ抑制に新法成立でも、リサイクルに積み重なる難題=具志堅浩二
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化学産業 廃プラ抑制へ新法成立も 課題山積のリサイクル=具志堅浩二
昨年10月の菅義偉首相のカーボンニュートラル(炭素中立)宣言が、化学産業にも変革を迫る。化学産業の業界団体である日本化学工業協会(日化協)は5月、政府のカーボンニュートラル目標達成に向けた化学産業の貢献策などをまとめ、「カーボンニュートラルへの化学産業としてのスタンス」を作成した。
プラスチックを含む化学製品の多くには、製造時にエネルギーとして化石燃料が使われ、プラ生産に必要なナフサなどの原料にも化石由来のものが使われる。同スタンスには、エネルギーについては省エネの推進や再生可能エネルギーへの転換など、原料では廃棄プラスチックの再利用やバイオマス原料の拡大、さらには二酸化炭素(CO2)のセメント生産への活用など、脱炭素化に向けたさまざまな方策が並ぶ。
化学メーカーの中で、三井化学は早くも昨年11月に、2050年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロを宣言した。バイオマス由来ナフサへの転換や、省エネ・再エネなどで脱炭素化を目指す。旭化成も5月にカーボンニュートラル実現に向けた方針を発表。廃プラ再利用やバイオマス原料の利用増、省エネ・再エネなどで30年の温室効果ガス排出量を13年度比で30%以上減らし、50年のカーボンニュートラル実現を目指す。同社の徳永達彦・サステナビリティ推進部長は「30年の目標はハードルが高いものの、達成できなくはない」と自信を示す。
生産面ではおおむね「エネルギー」と「原料」の両面で脱炭素化を図ろうとする化学業界だが、さまざまな困難も待ち受ける。
廃プラ再利用の課題の一つがコストだ。廃プラ再生原料の利用は化学産業だけでなく、食品業界や流通業界などの各社でも取り組みが進む。今後、各産業からの需要拡大に伴い再生原料が高騰し、調達が難しくなることは十分予想できる。すでに、サントリーグループが今年に入り、使用済みペットボトルの安定調達のため、全国6市町と相次いで協定を締結している。
廃プラの再利用の方法には、別のプラ製品などの原料として再生する「材料(マテリアル)リサイクル」や、化学反応によって組成変換して再利用する「ケミカルリサイクル」、燃やして生じる熱をエネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」の大きく三つがある。このうち、材料リサイクルやケミカルリサイクルは、回収の手間や品質の面から、原油価格次第では新品の「バージン材」よりもコストが高くなることがある。
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週刊エコノミスト
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