「金利が上がると株価が下がる」はただの先入観に過ぎない=岡元兵八郞
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どうなる米国株 好調な企業業績が市場をけん引 利上げでも上昇トレンド変わらず=岡元兵八郎
6月に発表された5月の米国のインフレ指標(消費者物価指数)は前年比5・0%上昇と記録的水準となり市場を驚かせた。インフレ懸念は市場の混乱要因となり、株価を大きく下げる局面もあったものの、今年に入って史上最高値を更新し続けた米S&P500株価指数は、6月30日にも史上最高値を更新するという結果となった。年初からの上昇率は14%である。その理由は何であろうか。株価を動かしているのはポスト・コロナの経済回復における企業業績の改善だと考える。
6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)は市場に波乱を起こし、投資家は「FOMC疲れ」を経験した。市場はテーパリング(量的緩和の段階的縮小)や政策金利の利上げを懸念するが、それはまだ先のことだ。
今は買いの好機
図は、2000年から現在までの政策金利であるフェデラルファンド(FF)レートとS&P500の推移を示したものだ。これを見ると、利上げの前にはその不安感から株価が調整する局面もあるのだが、実際に利上げが始まるとその後は長期的なトレンドとして株価の上昇が始まっていることが確認できる。「金利が上がるから株価は下がる」という先入観には気を付けるべきだろう。
このような事実から得られる教訓としては、利上げが始まる前に株価が調整する局面があれば、それはその後株価が上がる前の最後の買いの好機である可能性が高いということを覚えておくとよいだろう。
とはいっても、今でも市場にとってのリスクがないわけではない。インフレだ。米国ではコロナ対策として、失業保険の上乗せ給付金の支払い(週300ドル=約3万3000円)が行われている。
そのため、最低賃金で働くより、家にいて仕事をしない方が収入が高いという異常な状況が続いているのだが、この上乗せ給付金も9月の初旬までに終わることになっている。
インフレの見極め
米国ではサプライチェーン(供給網)にボトルネックが発生しており、あらゆるモノの値段が上がっている。人手が足りず、労働者の賃金が上がったことに加え、牛肉やベーコンなど基本的な食料品の値段が上がり、レストランも値上げを余儀なくされた。シャンプー、洗濯機、ドライヤー、プリンターなどの値上がりも報道されている。
原油価格が上がり、ガソリン価格も上昇、運転手が足りないこともあり、6000~7000ドルだった西海岸から東海岸までのトラックの輸送コストは1万2000ドルまで上昇したという。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は現在のインフレは短期的なものだと主張する。
だが、このような状況が本当に短期で終息するのかを見極める必要がある。
市場の焦点は、7月半ばから本格化する第2四半期(4~6月)の米国企業の業績発表だ。S&P500は前年同期比で63・5%の増益予想で、その後も第3四半期(7~9月)は24%、第4四半期(10~12月)は16・2%の増益予想だ。
企業業績は第2四半期に大きくリバウンドした後も、継続して伸びる見通しであり、米国株市場の長期的な上昇トレンドがここで終わることは考えにくい。歴史的に弱い9月、10月には一時的な株価の調整が起きると予想されるが、その後市場は上昇し、年末は高く終わると見ている。約4・5兆ドル規模の米国のMMF(マネー・マーケット・ファンド)という待機資金は株価のサポートとなろう。
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