過度な財政出動でバイデン求心力に陰り、中間選挙はオバマの二の舞か=足立正彦
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政治 「大きすぎる」バイデン政権 中間選挙で与党議席減のリスク=足立正彦
バイデン政権の発足から約半年が経過しようとしている。バイデン大統領は新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけ、打撃を受けた米国経済の再建を図らなければならないという困難な課題に直面する中で、政権を始動させた。
与野党の激しい対立
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3月11日に成立した総額1・9兆ドル(約209兆円)規模の新型コロナ経済救済策「米国救済計画法」は、上下両院の共和党議員が誰一人として賛成には回らず、バイデン氏の超党派主義の訴えは激しい党派対決を前にいかに脆弱(ぜいじゃく)かを露呈した。
バイデン政権が公約で掲げる米国経済再生のための経済アジェンダ「より良き米経済の再建」は、「米国救済計画法」やインフラ整備計画の「米国雇用計画」、教育や医療、子育て世帯支援などが規定された「米国家族計画」の3本柱で構成されている(表1)。
バイデン大統領は老朽化した道路や橋、鉄道網などのインフラ整備を図る総額2・3兆ドル(約253兆円)規模の「米国雇用計画」を3月末に発表し、5月末のメモリアルデー(戦没者追悼記念日)をめどに与野党合意を目指していた。
しかし、連邦法人税率の大幅引き上げによる財源確保や伝統的なインフラ整備の範囲を大きく上回るバイデン政権のインフラ整備計画に対して野党の共和党が反発。インフラ整備計画を巡る与野党協議は難航を余儀なくされ、与野党が妥協したインフラ整備計画では総額1・2兆ドルに縮小される結果となった。
民主党が求めていたインフラ施策が与野党協議の中で削減され、財源についても譲歩を余儀なくされる中、民主党内のリベラル派議員は総額1・8兆ドルの「米国家族計画」の成立を強く求めている。バイデン政権は共和党とのインフラ整備計画の妥協と、民主党リベラル派への配慮という厳しい立場に置かれている。
そうしたバイデン大統領の困難な立場を象徴する出来事もあった。共和党上院議員とインフラ整備法案で妥協が成立した6月24日にバイデン氏は、「米国家族計画」も同時に成立できないのであれば、インフラ整備法案に大統領拒否権を発動すると発言。2日後、同発言の撤回に追い込まれる事態となった。
政権発足から間もなく半年が経過するバイデン大統領の支持率は新型コロナ向けワクチンの接種の進展などによりおおむね50%台半ばで推移している。しかし、バイデン政権が公約に掲げる「より良き米経済の再建」の財政出動要求は第二次世界大戦後最大の規模の総額約6兆ドルに達しようとしており、かつてない大規模な財政出動や財源としての増税の実施に共和党議員は強く反発している。そのためバイデン氏の長年に及ぶ上院議員や副大統領としての政治経験に基づく超党派主義の訴えは、ほとんど機能していない。
敗北前の駆け込み法案
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そうした中で、来年11月には20…
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週刊エコノミスト
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