経済・企業 雇調金
雇用調整醸成金の計上額上位10社=二木章吉
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コロナ禍の「雇用維持装置」 成長機会を逸するもろ刃の剣=二木章吉
コロナ禍を受け昨年4月、雇用調整助成金(雇調金)の特例措置が始まった。昨春の開始からの申請件数は今年6月上旬時点で約372万件、支給金額は3兆6669億円に達する。
上場企業716社が申請
このうち、上場企業の雇調金申請は4月末までの開示資料によると、716社(全上場企業に占める割合18・6%)が申請し、計上額は3944億7530万円に達する。1度目の緊急事態宣言が発令された昨年4月上旬から5月にかけ感染拡大防止のため、経済活動が停滞した。これに伴い百貨店やショッピングセンターなどの商業施設、外食産業にとどまらず、一部メーカーでも一時的に操業を停止し、従業員の休業や一時帰休が相次いだ。
その後もコロナ禍は長引き、新型コロナウイルスが直撃した業種と、それ以外の業種で売り上げ回復に大きな乖離(かいり)が生じた。感染拡大から1年半になろうとする現在も、観光や交通インフラ、外食、アパレルは苦境から抜け出せず、“コロナ直撃業種”の雇用維持に不透明感が漂う。
コロナ禍で雇用維持を模索する業種は二極化し、これは上場企業も例外でない。上場企業が申請した雇調金計上額の上位80社では、昨年12月末と今年4月末の開示資料を比較すると、新型コロナの影響が業績を直撃した非製造業(情報通信を除く)と、コロナの被害が比較的少ない製造業では、雇調金計上額の伸長率に大きな差が生じている。
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昨年12月末では上位80社中、陸運、空運を含む旅客運送業は15社が含まれ、計上額は合計656億3500万円だった。だが、航空会社が運休やダイヤ見直しを強いられ、鉄道会社も本業に加え、直営の商業施設や観光事業の業績不振が長引き、4月末には19社に増加した。計上額は1208億4500万円と1・8倍に膨らんだ。これには計上額が非開示の日本航空(JAL)は含まれていない。計上額の上位10社には、運輸やサービス業が並んだ(表)。
運送・外食・百貨店
上位80社で12月末から4月末までに社数が増加した業種は、運送(15→19社、計上額12月末比84・1%増)のほか、外食(8→11社、同166・3%増)、百貨店・ショッピングセンター運営(7→8社、同31・3%増)、冠婚葬祭・カラオケ運営(4→5社、同106・6増)など、いずれもコロナ禍で休業・時短営業を求…
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週刊エコノミスト
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