日本経済 景気は9月から急回復へ 10〜12月期にはコロナ前水準に=河野龍太郎
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2度目のコロナ緊急事態宣言の影響で、今年1〜3月期のGDP(国内総生産)は3四半期ぶりにマイナス成長となった。ゴールデンウイークを中心とする3度目の緊急事態宣言もあり、4〜6月期はゼロ成長が見込まれる。さらに7〜9月期についても、4度目の緊急事態宣言が続く少なくとも8月22日までは、サービス関連を中心に経済活動の上限は抑え込まれるだろう(図1)。
残念ながら、この1年半、日本の医療対応能力の上限はさほど上昇していない。このため、経済活動が一定の水準を超えると感染が広がり、経済活動を抑制せざるを得なくなった。医療対応能力は多少高まっているのだろうが、感染力の強い変異株が現れ、それを打ち消してしまう。
東京オリンピックの多くの競技で無観客となったことの影響は、さほど大きいとは思われない。だが、4度目の緊急事態宣言が夏休み、お盆と重なることで、一定程度の悪影響は避けられない。
問題は、それが日本経済に致命的なダメージをもたらすかどうかだ。
貯蓄は36兆円に拡大
結論を先に述べる。今回の緊急事態宣言が実体経済に致命的ダメージをもたらすことはないだろう。最大のサポート要因は、ワクチン接種が加速していることだ。高齢者向け接種は7月末におおむね終え(図2)、一般向け接種も10〜11月に完了する見込みだ。
1年を超える巣ごもり生活で、サービスを中心に支出が抑制され、欧米と同様、日本でも家計に大きな貯蓄が積み上がっている。GDP統計でみると、2020年は金額にして35・8兆円と前年の6・9兆円の5倍に達し、貯蓄額を可処分所得で割った貯蓄率は11・3%(前年2・3%)まで上昇した。昨年のコロナ対策の特別給付金も貯蓄の積み上がりに拍車をかけた。
高齢者を中心にワクチン接種が広がれば、これまで抑えられていた旅行や外食などのペントアップデマンド(繰り越し需要)が現れ、景気回復を一気に加速させる。欧米は、供給能力に追いつかない需要の盛り上がりで、価格が急上昇しているほどだ。日本は過去1年半の苦境もあるのだから、こんな時にこそ価格を引き上げるべきだが、コロナ禍で皆が苦労している時に日本人は値段を上げるのはフェアではないと考える。それゆえ、長い待ち行列がさまざまな分野で発生するだろう。
今回の緊急事態宣言の悪影響を取り除くべく、この夏にも政府は大規模な経済対策を編成する可能性がある。真水で30兆円を超すかもしれない。ただ、コロナの集団免疫が獲得されれば、政府の関与がなくても人々は支出を大きく増やす。困窮する家計のサポートは重要だ。だが、外食や宿泊への支出を促す政策を取ると、待ち行列をさらに長くするだけだろう。
それでは、経済はどのタイミングでコロナ前の水準に戻るのか。筆者は、GDPがコロナ危機前の19年10〜12月期の水準に戻るのは21年10〜12月期と予想している。緊急事態宣言解除後の9月から経済は急速にリバウンドする。変異株の影響やワクチン不足問題から多少遅れるとしても、今年末には集団免疫が獲得され、いずれにせよ10〜12月期には大きなリバウンドが生じる。今年末の日本経済は久々の活…
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週刊エコノミスト
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