日本株 楽観・悲観両シナリオで年度末に3万5000円=広木隆
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今年度後半の日本株は、オリンピック・パラリンピック期間中からその後の新型コロナウイルスの感染状況に左右される。
ポジティブシナリオは、東京都に7月発出された緊急事態宣言や五輪の無観客開催、さらにワクチン接種の進展などの効果によって感染が抑制されるというものだ。「安全・安心な五輪開催」が成功したという余勢をかって菅政権は解散総選挙に打って出るだろう。
ワクチン接種が進み感染が抑制されたならば、与党は総選挙に勝利し、菅義偉首相も自民党総裁を続投するだろう。過去のパターンで与党の勝利は株価押し上げ要因になってきた。政治の安定を好感して外国人の買いも戻るだろう。
リスクは「与党敗北」
ネガティブシナリオはコロナ感染が再拡大するパターンだ。都内で感染力が強いデルタ株の感染割合が増え始めており、予断を許さない。衆院議員の任期満了は期限が決まっているため感染抑制ができないまま「追い込まれ解散」となりかねない。
今回の都議会選挙で自民党が過去2番目に少ない議席数となったことは、政府のコロナ対策に対する都民の不満表明であり、そうしたネガティブシナリオのもとでの総選挙は都議会選挙の再現となる可能性がある。
与党の敗北で政治リスクが意識され、株式相場はいったん下値模索の動きとなるだろう。もっとも与党もみすみす「負け戦」に突入することも考えにくい。菅氏で選挙を戦えないと「菅降ろし」に動く、もしくは菅氏が辞任するなどのシナリオが考えられる。その場合は一時的に政治空白が生まれるものの、早晩、後任のリーダーへの期待が生まれるだろう。
安倍晋三・前首相の再登板の可能性はおいておくが、安倍氏は講演で総選挙への危機感を強調し「政府と日銀の連合軍で、思い切った対策を打てる状況にある」と発言している。ネガティブシナリオとなっても財政・金融政策の大々的な発動期待に結びつく。
結局、夏の感染状況は二つのシナリオが考えられるが、ポジティブシナリオでそのまま上がるか、ネガティブシナリオで一旦下値を探ってから切り返すか、たどるパス(経路)は違っても最終的には相場は浮上するだろう(図1)。
今年度後半の日本株相場にとって大きな要因は、米国の金融政策とそれを受けた米国市場の動きだ。カギを握るのは足元で高まっているインフレ圧力がこのまま継続するか、あるいは米連邦準備制度理事会(FRB)の見立て通りに沈静化してくるかだ。筆者は、インフレは一時的で供給制約の解消とともに落ち着いてくるとのFRBの見方を支持する。理由は、前期の数字が変化したことの影響が上昇率の数字に影響してしまう「ベース効果」の剥落、失業給付の上乗せ撤廃で労働市場に労働者が戻り、極端な人手不足がある程度は緩和されると予想されるからだ。
いずれにしても市場は2022年の早い段階でテーパリング(量的緩和の段階的縮小)開始、23年に2回の利上げというシナリオ…
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週刊エコノミスト
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