中国経済 投資息切れも、消費・輸出好調 4〜6月期は7.9%成長に=三尾幸吉郎
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新型コロナウイルス感染症を早期に収束させた中国経済は順調に回復してきている。先ごろ公表された2021年4〜6月期の国内総生産(GDP)は実質で前年同期比7・9%増と前四半期の同18・3%増を大きく下回ったものの、依然8%近い伸びを示した。
コロナ前(19年10〜12月)の実質GDPを100とした指数を見ると(図1)、コロナ禍で混乱した20年1〜3月期には91・3と経済は急収縮することになった。しかし、財政金融両面からコロナ対策を実施したことや厳格な防疫管理でコロナ禍を早期に収束させたことが奏功し、4〜6月期には100・4と早くもコロナ前の水準を上回った。その後も散発的なコロナ感染はあったものの小振りに収まったため、右肩上がりで回復してきた。
小売売上高23%増
ただし、中国で今年3月に開催された全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)では財政金融政策を引き締める方向に調整する方針を打ち出し、最近では投資の勢いに陰りが見えるなど経済の変調を示すデータが散見されるようになってきた。
中国経済がV字回復する上で主役を演じたのが投資だった。財政金融両面から打ち出されたコロナ対策が投資を促し、昨年3月には早くも前年水準を回復し、20年通期では前年比2・9%増、21年上半期も同12・6%増と高い伸びを示した。しかし、足元の投資はやや息切れ気味で、筆者が推計した前年同月比の伸びは5月以降2カ月連続でマイナスとなった(図2)。中国政府がコロナ対策で拡大した財政赤字を縮小し、コロナ対策で緩んだ金融規律を引き締め方向に経済政策を調整し始めたことが背景と見られる。
コロナ禍のダメージが大きかった個人消費は、代表指標である小売売上高が20年通期で前年比3・9%減に落ち込むなど足かせとなっていた。しかし、今年に入って持ち直し、21年上半期の小売売上高は前年同期比23・0%増と投資を上回る伸びを示した(図2)。個人消費の今後を占う上で重要な指標を見ると、21年上半期の国民1人当たり可処分所得は実質で前年同期比12・0%増と、昨年の同2・1%増を大幅に上回った。調査失業率(都市部)を見ても、コロナ禍で失業が増えた昨年2月には6・2%まで上昇したが、今年6月には5・0%まで低下しコロナ前の水準まで改善した。さらに昨年6月には112・6ポイントまで低下した消費者信頼感指数も今年6月には120ポイント台を回復しており、個人消費を取り巻く環境は改善してきている。
他方、輸出(ドルベース)は好調で、21年上半期も前年同期比38・7%増と極めて高い伸びを示した(図2)。商品別に見ると、昨年好調だった…
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週刊エコノミスト
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