共産党100周年で、浮き彫りになった毛沢東時代へ「先祖返り、強国主義貫く習近平氏=興梠一郎氏
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共産党100周年 毛沢東時代へ「先祖返り」 強国主義貫く習近平氏=興梠一郎
中国共産党が創立100周年を記念し、7月1日に首都北京で記念式典を行った。その様子や内容を分析するのは、今後の中国の動向を占ううえで有益だ。私が、気付いた点を指摘したい。
まず、式典の場所である。今回は、天安門広場で大々的に行った。党の行事にもかかわらず、国の行事である国慶節に近い規模だった。2016年の95周年大会では、会場は人民大会堂であり、参加者も3000人程度だった。
また、新たに北京市に「中国共産党歴史展覧館」を作った。これは、1921年の共産党設立後の歴史を展示した巨大施設だ。習近平国家主席・党総書記は、特に、共産党の歴史の見直し、歴史教育を重視している。展覧館の歴史展示も現役である習近平氏が占める割合が多いと話題になっている。「中国共産党略史」も100周年のためにわざわざ作った。
毛沢東氏をほうふつ
式典そのものを見ると、習近平氏の服装が真っ先に目に入ってくる。グレーの「中山服」、いわゆる人民服を着ている。今回、習近平氏が登場した天安門の真下に、毛沢東主席の肖像画があるが、あたかもそれをほうふつとさせるいでたちだ。95周年の時は、人民大会堂で普通のスーツに赤いネクタイだった。
今回の習近平氏のスピーチは、重要なポイントがいくつかある。95周年の際は、毛沢東、鄧小平、江沢民の3人を「核心」と位置付けた。しかし、今回は、核心は、習近平氏1人だけで、毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤の4人を「主要な代表」と言い、格下げした格好になっている。習氏自身が「毛沢東も超える」と思わせる部分があった。
台湾問題については、「台湾の平和的な統一のプロセスを推進する」としながらも、中国の「断固たる意志と強大な能力」を見くびるなと強調した。また、「いかなる台湾独立のたくらみも粉砕する」という強い文言が入った。これは95周年の時にはなかった。香港に関しては、国家安全維持法を着実に実行して、「全面的な管治(統治)権を中央は行使する」と強調し、97年の香港返還時の英国との約束である「1国2制度」を事実上、否定した。
このように、習近平氏の思想は、「中華民族の偉大な復興」という非常に復古的、国家主義的な色彩が強い。17年に政権2期目に入った時の彼のキーワードは「強国」だ。毛沢東は「列強に対し中国人民を立ち上がらせた」、鄧小平は「人民を豊かにした」、そして、自分は「人民を強くした」というわけだ。そのため、対外的には強硬な一方で、対内的にはがっちりと統制をとっていくという考えが濃厚だ。
問題は、このような毛沢東時…
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週刊エコノミスト
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