ASEAN主要5カ国は輸出急増で景気回復けん引、2021年は4%成長の見通し=高橋尚太郎
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<第2部 新興国・商品・為替>
東南アジア経済 米中の景気回復で輸出が急増 ワクチン接種は各国で濃淡=高橋尚太郎
東南アジアでは、財(モノ)の輸出増加がこれまで以上の力強さで景気回復をけん引している。東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の輸出合計は、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年を優に超える水準に達し、とりわけベトナムは2~3割超の増加と極めて好調だ(図)。主要輸出先である米国と中国の需要増に加え、パーム油やエネルギーなどの世界的な需要持ち直しと価格上昇が追い風となり、ASEAN主要5カ国が、それぞれの強みを生かすバランスの取れた形の輸出増加が続いている。
しかし、新型コロナのインド型変異株(デルタ株)の域内感染拡大により、経済情勢にも暗雲が漂っている。ASEAN最大の経済規模を持つインドネシアでは、足元で医療体制の逼迫(ひっぱく)が深刻化しており、マレーシアも同国最悪となる感染拡大が続いている。コロナ対策を強力に進めるベトナムですら、デルタ株の抑え込みに苦慮するなど、ASEAN地域はコロナ収束が見通せない状況にある。
このため、各国では人々の活動・移動制限が強化されており、商業施設の集客は再び大幅に減少している。コロナ禍でオンラインやデリバリー消費がある程度普及してきたとはいえ、消費活動には一定の下押し圧力がかかる。低所得者向け賃金保障などの経済対策が再度打ち出されているが、消費者マインドの冷え込みは長期化しており、耐久消費財などへの需要に影響が出ている。比較的早期に持ち直した企業のマインドも再び悪化し、設備投資の回復が足踏み状態にあるようだ。
活動制限の強化は、各国政府が景気回復のエンジンとして期待するインフラ整備の工事遅延に直結する。さらに、タイなどインバウンド需要の依存度が高い国では、世界的なワクチン接種の進捗(しんちょく)を見据えて、観光地を中心に受け入れ準備を進めているが、今後は計画の見直しを迫られる可能性もある。
接種が遅れる国も
ワクチン接種の状況については、当社による各国の分析によれば、1回以上のワクチン接種率が15~30%を超えるあたりから、消費の活発化につながる傾向を確認している。当社のアジア各拠点向けに実施したアンケートでも、ワクチン接種の広がりは、消費者のマインド改善を喚起しやすいことがうかがえる内容だった。
ASEANのワクチン接種は、主要5カ国平均で1回以上の接種率(7月12日時点)が13%で、世界平均の26%を下回る状況にある。ただ、接種が加速している国もある…
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週刊エコノミスト
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