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AIオンデマンドバスが京丹後市などで運行開始、タクシーには脅威か=具志堅浩二

京丹後市で始まった「mobi」の車両 筆者撮影
京丹後市で始まった「mobi」の車両 筆者撮影

リアルタイム配車 月定額の乗り放題交通 京丹後市など各地で運行開始=具志堅浩二

 月額定額料金で家族みんな乗り放題──。こんなうたい文句のAIオンデマンド交通が6月30日、京都府京丹後市で運行を開始した。サービスの名称は「mobi(モビ)」。運行エリアは市内の峰山町および大宮町の一部で、地元タクシー会社の峰山自動車が車両の運行を、バス事業などを展開するWILLER(ウィラー)が予約の管理や配車を行う。

 スマートフォンのアプリケーションか電話で予約すれば、10分程度で指定した乗降場所に車両が到着し、エリア内を移動できる。乗降場所は、京都丹後鉄道の峰山駅をはじめエリア内のさまざまな箇所に配置されている。予約の時間や移動方向がある程度一致すれば、2名以上の乗り合いとなるケースもある。車両はワンボックス車を用いる。

 運賃は月額会員が1人5000円で、会員の同居家族は1人当たり500円追加で利用できる(同居家族は最大5人まで)。会員でなくても、乗車1回につき大人300円、子ども150円を払えば利用可能。

「携帯電話でもかけ放題料金だとより通話しやすくなるように、定額制にすることで都度払いのストレスなしに乗れるようになる」とウィラーの村瀬茂高社長。地方では買い物や通院のため自家用車が欠かせず、一家で複数台を所有するケースも多い。ウィラーは、通院や買い物などの近距離移動にmobiを利用することで、運転免許を返納した高齢者がより移動しやすくなり、一家の自家用車も減らせるので経済的負担も軽くなるとアピールする。

 採算ラインは個人会員200件および法人会員30件ほど。初日までに個人約70件、法人約5件の入会があったと言い、村瀬氏は「開始時にこれだけの会員数があるとはうれしい限り」と手応えを口にした。

 翌7月1日には東京都渋谷区でもmobiを開始。村瀬氏は「都心と地方では使われ方が変わると思う」と予想する。

 AIオンデマンド交通の定額運賃導入について、立命館大学理工学部の塩見康博准教授(交通工学)は次のように課題を指摘する。

「成功するかどうかは運賃設定次第。割安感があり、かつ利益も出せる運賃を見定める必要がある。安すぎると需要が増えすぎて配車が滞ってしまい、かえって客が離れる可能性もある」

郊外や過疎地に需要

 ここで、AIオンデマンド交通と路線バスとの違いを整理する。乗り合い輸送が可能なところは同じだが、AIオンデマンド交通は運行時間や路線が決まっておらず、需要に応じてAIでその都度最適な運行時間やルートを割り出して運行する点で大きく異なる。乗降場所も、路線上にいわば「線的」に置かれるのではなく、運行エリアのさまざまな場所へ「面的」に配置できる。

 オンデマンド交通自体は以前から存在するが、従来は最短でも利用の数時間前までに予約する必要があった。これに対し、AIオンデマンド交通は予約が入ればAIですぐにルートを定めて配車するため、予約から10分程度で利用することも可能だ。

 少子高齢化や過疎化が進む中、特に地方ではバス路線の撤退が相次ぐほか、タクシー会社も撤退、廃業で地域からいなくなるケースもある。交通手段を確保するための自治体の補助にも限界があり、地域の足を守るべく持続可能な交通機関が求められている。こうした現状を背景に、AIオンデマンド交通は効率的な運行が可能な交通機関として期…

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週刊エコノミスト

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