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経済・企業 鉄道緊急事態

大手鉄道19社の決算を大解剖する=松田遼

コロナ禍の帰省(東京駅)
コロナ禍の帰省(東京駅)

決算解剖 大手19社全社が赤字転落 今期の利益水準も低迷=松田遼

 鉄道大手19社(上場JRグループ4社、大手私鉄15社)の2021年3月期決算は、新型コロナウイルスの影響を通年度で受けた初年度となった。そのため19社全体の営業収益(売り上げ)は、前年度より34・5%減少。全社が赤字に転落した(表1)。JR東日本の公表資料によれば、同期の営業収益の減少額(1兆1820億円)のほとんどが、コロナによる影響額(1兆1710億円)である。(表の拡大はこちら)

 鉄道旅客収入は通勤・通学による「定期」とそれ以外の「定期外」に区分される。コロナ以前(20年3月期)では、「定期」の割合はJRグループで約2割、大手私鉄で約4割だった(表2)。(表の拡大はこちら)

 JRグループでは、新幹線を含む「定期外」の割合が約8割であり、その依存度が高い。21年3月期決算では、JRグループおよび大手私鉄ともに「定期」収入の前年からの減少率は約2割であるが、「定期外」収入の減少率は、新幹線の利用率の低下が大きいJRグループが約6割、大手私鉄が約4割だった。

 また、全体の売り上げに占める旅客運輸収入の割合がJRグループでは平均6割に達し、緊急事態宣言など人の移動制限の影響が大きく出た。一方で、私鉄は平均で2割にとどまり、グループの不動産事業である程度補えた鉄道大手もある。

 各社は鉄道、バスなどの運輸事業以外にも、流通、物流、不動産、建設、レジャーなど多角化した事業構造を持つ。コロナの影響を大きく受けている事業群は、人の移動を伴う鉄道などの運輸以外にもホテル、流通やスポーツ(プロ野球球団など)・観劇(宝塚歌劇など)のエンターテインメントなど多岐にわたる。

 一方で、物流、不動産、建設事業などへの影響は比較的少ない。物流でいえば、規模の大きい名古屋鉄道のトラック運送事業(21年3月期の営業収益は1498億円)では、前年からの減収率は5%にとどまっている。

会計基準変更に注意

 では、今期(22年3月期)はどうか。JRグループ4社は、新幹線の利用率回復などもあり、4社では営業収益が20年3月期の平均7割の水準まで回復すると見込んでいる。ただし、純利益は低迷が続く。コロナワクチンの接種が進むものの、感染拡大はまだ続き、国内旅行需要は後ろ倒しになり、新幹線需要の戻りにも時間がかかるためだ。JR西日本とJR東海は22年3月期の通期見通しを下方修正した。

 一方、大手私鉄は22年3月期から適用される「収益認識に関する会計基準」の影響に注意が必要だ。収益認識基準の影響は、主に営業収益(売り上げ)計上に対するものだ。流通事業や広告代理店業、旅行業などへの影響が比較的大きい。

 例えば、同基準では百貨店での消化仕入れ取引が、総額計上から純額(売り上げと仕入れの差額)計上になる。そのため、22年3月期の会社見通しでは、傘下の百貨店では、その営業収益が半減するケースも見受けられる。

 また、広告代理店事業でも広告収入の総額計上から業務受託料のみの計上となり、その営業収益が大幅に減少する場合がある。例えば、東急傘下の東急エージェンシーでは408億円の減収効果が見込まれている。

 一方で、新基準において旅行事業では、企画旅行取引の計上が純額から総額に変更されるため、営業収益が増加することになる。大手旅行代理店を傘下に持つ鉄道会社では大幅な増収を見込んでいる。

減収率(1)営業収益

 1位JR東海、2位近鉄GHD

 3位JR西日本、4位JR東日本

拡大はこちら

 コロナ禍が年度を通じてフルに影響した2021年3月期。営業収益(売り上げ…

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