経済・企業 鉄道緊急事態
有楽町新線・品川新線整備の見返りにメトロ上場が一歩前進=枝久保達也
有料記事
東京メトロ上場 新線整備を担う見返りに東京都がメトロ株を売却へ=枝久保達也
民営化から17年が経過した東京メトロの2020年度決算は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、過去最悪となる約529億円の純損失を計上した。これは大手私鉄15社では西武ホールディングス(HD)、近鉄グループホールディングス(GHD)、東急に次いで4番目に多い数字となった。
ただ多数のグループ企業を擁するこれら事業者と東京メトロでは同じ巨額の赤字でも様相が異なる。大手私鉄のビジネスモデルは鉄道事業を中心に不動産、流通、レジャーなどを展開する多角経営を特徴とするが、東京メトロは売り上げの85%以上を鉄道事業が占めており、鉄道事業の浮沈が会社の経営に直結する。
20年度第4四半期(21年1〜3月)の定期利用者数はコロナ前の18年度同期と比べて33%減、定期外利用者数は同38・4%減となり、定期、定期外ともに大きく減少した。しかし、8月5日に発表された21年度第1四半期決算では、定期利用者が19年度同期比33・3%減、定期外利用者が36・7%減と引き続き低調ながら、20年度第1四半期に同62・5%減と大幅に落ち込んだ定期外利用者の回復により、営業損失は約7億円(前年同期約164億円)、純損失は約12億円(同約136億円)まで縮小。業績は回復傾向にある。
遅れる完全民営化
そんな中、東京メトロの株式上場に向けた動きが加速している。04年に帝都高速度交通営団(営団地下鉄)が民営化されて誕生した東京メトロであるが、現時点では完全な民営企業ではなく、政府が53・4%、東京都が46・6%の株式を保有する特殊会社という位置づけである。
東京メトロの根拠法である東京地下鉄株式会社法の付則第2条には「できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする」と定められており、国と都は株式を早期に売却し、完全民営化を達成するというのが既定路線であった。
ところが東京メトロへの影響力を保持しておきたい都が株式の売却に難色を示してきたため、株式売却、株式上場はいまだに実現していない。東日本大震災を受けて11年に成立した復興財源確保法でも、22年度までに国の保有する株式を売却し、売却益を復興財源に充てるとしていた。しかし、都との協議は遅々として進まず、昨年2月に売却期限を5年間延長す…
残り1231文字(全文2231文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める