経済・企業

中国EVが、たった5年で「大衆」が使うクルマになるワケ=湯進

50万円を切る価格の中国EV「宏光MINI」のオープンカーモデル 筆者撮影
50万円を切る価格の中国EV「宏光MINI」のオープンカーモデル 筆者撮影

中国の市場支配 高級と格安の二極化から25年以降は大衆車もEVに=湯進

 2020年、中国の電気自動車(EV)市場は風向きが変わった。それまで中国でEVといえば、自動車メーカーの内燃機関車モデルをEV仕様にしたものが大半だったが、米EV大手テスラが、最大生産能力50万台という巨大工場「ギガファクトリー3」を上海市で稼働させると、そこで生産された「モデル3」の販売台数が20年のEV乗用車でトップとなり、中国の地場ブランドを大きく引き離した。

 そのテスラを、中国新興メーカーの上海蔚来汽車(NIO)やLiオートが追いかけ、中国の大都市では中大型の高級EVブームが起きた。

 その一方、地方都市や農村では、低価格EVの販売台数が伸びた。上海GM五菱汽車が20年夏に発売した「宏光MINI」は、2・8万元(約46万円)で販売して価格破壊を起こし、低価格・小型EVが新たなトレンドになった。

 宏光MINIは全長2・9メートル、全幅1・5メートルの4人乗り小型車で、航続距離は120キロ(下位グレード)、家庭用コンセントから充電できる。安全装備は切り詰め、エアコンもオプションだ。一般車両には手が届かず、安価・簡易な乗り物を「移動する足」にしてきた消費者にとって、低価格EVは新たな選択肢となった。宏光MINIは女性向けのモデルや、オープンカーモデルなど品ぞろえが増えた。

ボリュームゾーン開拓

 EVを中心とする中国の新エネルギー車(NEV)販売台数は12年の1・2万台から21年1~6月の120・6万台へと急速に伸び、通年は240万台に達すると見込まれる。なかでも宏光MINIの販売台数は15万7939台と、2位のテスラ・モデル3(8万4845台)に2倍近い差をつけて1位となっている。中国ではEV価格の二極化が進んでおり、地方都市や農村では日本円で100万円以下の低価格EVの需要が伸び、大都市では350万円以上の高級EVの販売台数が増えるだろう。

 高級車と低価格車ではEVの販売台数が増えているが、中国新車市場の半分を占めるボリュームゾーン(大衆車)である中間価格帯(小売価格が約150万~350万円)は、まだガソリン車が強い。この価格帯で増えたEVが、またガソリン車にシェアを奪われることもある。

 EV市場を価格別で見ても、中価格帯の占める割合は20年の34%から21年1~6月は23%へと減少した。このよ…

残り1607文字(全文2607文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事