経済・企業

EV市場でトヨタが生き残る条件は・・・200万台じゃ全然足りない?=遠藤功治

トヨタが発表したEV「bZ4X」(4月の上海モーターショー) (Bloomberg)
トヨタが発表したEV「bZ4X」(4月の上海モーターショー) (Bloomberg)

トヨタの生存条件 まだ足りないEV販売目標 30年に欧米向け250万台必要=遠藤功治

 トヨタ自動車は5月、それまでの電動化戦略を大幅に強化した。

 最初の電動化戦略を発表したのは2017年。その計画は「30年までに世界で550万台の電動車を販売、うち100万台がEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)」というものであった。その2年後の19年には5年前倒しして、25年までに達成するとした。そして今年5月の本決算発表時に、新しい電動化戦略を打ち出し、「30年に電動車800万台、うちEVとFCVで200万台」へと変更した。

 それまで独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)など他の競合大手に出遅れていたトヨタの株価が、この発表と非常に堅調な20年度決算内容を境に上昇に転じ、連日上場来高値を付け、6月には初めて1万円の大台を突破した。“EVで出遅れているトヨタ”というイメージが、ある程度払拭(ふっしょく)された格好である。

残された時間は少ない

 トヨタの環境政策が短期間に複数回修正されたのは、各国の環境政策が最近になって頻繁に変更されているからに他ならない。ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)に関わる問題意識が、世界中で高まっていることが影響している。

 トヨタなど自動車各社にとって頭が痛い点は、環境政策が常に各国の政治情勢に左右され、かつ各国ごとにその政策内容が異なり、そしてその政策が頻繁に変更されるということであろう。

 トヨタは5月に発表した計画の中で、各国でのEV販売比率を発表した。すなわち30年の段階で、日本はEV10%、HV(ハイブリッド車)85%、北米はEV15%、HV55%、欧州はEV40%、HV60%、中国はEV50%、HV50%である。現状のトヨタの計画に基づいてSBI証券がシミュレーションした車種別の販売台数の推移が図1、2である。

 ところがその後、欧州が35年でガソリン車をゼロに、米国でもバイデン大統領が30年までに電動車比率を50%にするとの大統領令を発表した。正式決定はまだだが、この電動車の定義の中に、HVは含まれない可能性が高い。

 つまり、トヨタの5月に発表した目標値では、欧州でも米国でも規制をクリアすることができず、早くも再修正しなければならない可能性が出てきた。仮に欧米での規制が前述のようなものになると…

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