経済・企業 EV世界戦
EVの先行者テスラ、今度は「自動運転」も月額2万円のサブスク!=松田精一郎
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EVはこう稼ぐ! テスラ自動運転は「月額2万円」 電池長持ちで中古価格も高い=松田精一郎
米テスラがベータ版(正式な製品版となる前の試供版)としてテストを続けていた自動運転プログラム「Full Self-Driving(フル・セルフ・ドライビング)(FSD)」のサブスクリプション(サブスク=定額料金を払って利用するコンテンツやサービス)を、7月下旬から月額199ドル(約2・2万円)で開始した。
FSDの機能は、高速道路や一般道での「自動追い越し」「自動的な側道進入」「自動駐車」「駐車場出迎え(スマート・サモン)」「信号機の自動認識」で、名前こそ「完全自動運転」だが、実際にはドライバーがハンドルに手を添え、前方注意義務を負う「自動運転レベル2+」に相当する。一般に想像される完全自動運転(レベル4)には至っていない。
とはいえ、これまでFSDは1万ドル(約110万円)の買い切りで提供されてきた。これをサブスクで提供することで、気軽に体験できるようになった。
FSDの導入は「OTA(オーバー・ジ・エア=無線通信を経由したデータの送受信)」と呼ばれる無線ネットワーク経由で行われる。クルマが「HW3・0」というシステムを搭載していれば、スマホにアプリをインストールするのと同じ仕組みで搭載できる。つまり、ハードウエアが対応していればソフトウエアの追加でさまざまな機能を試すことが可能になり、使いたい期間だけ利用できる。また、ハードが対応していなければ、アップグレードで可能になる。これは、アップルやグーグルなどPC(パソコン)やスマートフォン業界のビジネスモデルと同じだ。今回のFSD更新にあたり、テスラはベータ版をバージョン9まで配布し、データの収集と改善を続けてきたが、これもPC・スマホ業界の流儀だ。
特にテスラは、アップル同様にハード開発からアフターサービスまでを「垂直統合(開発・生産・販売など一連の業務を単一企業で行う)」で提供するため、新機能開発や提供がしやすい。車載チップの統合を早くから進め、AI(人工知能)処理プロセッサーも自社開発したテスラは、ビジネスモデルと対応するハードやソフトの提供で、既存の自動車メーカーより明らかに先行してきた。
結果、一度購入したら、後から機能追加がほぼ不可能な従来のクルマと違い、テスラは「型落ちでも最新の機能が後から追加できる」ため、将来にわたり商品力=価値が落ちにくい。消費者にとっては他のクルマより高い残価(下取り価値)が期待でき、購入時のリスクが下がる。最近増えている「残価設定型ローン/リース」でも、競合に対して大きなアドバンテージとなる。
「肝」は電池の耐久性
EVで最も重量が重く高価な部品はバッテリーだ。テスラでは「18650」と呼ばれる、ノートPCなどに搭載されてきた小型のバッテリーセルを採用してきた。最大の理由はコストだ。…
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週刊エコノミスト
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