経済・企業

EVの原価はガソリン車より6割も高い!大手はディーラー改革に乗り出せるか?=坂上翔

    苦しい大手メーカー 宣伝費とディーラーが重し 逆転の鍵は「オンライン直販」=坂上翔

     クルマがガソリン車から電気自動車(EV)に変わると「原価」が大きく増加する。

     クルマの費用構造は、ボディーや内装といった共通部分にパワートレイン(動力装置)が載っていると考えると分かりやすい。まず、ガソリン車ではパワートレインにエンジン、トランスミッション(変速機)などが使われる。

     一方、EVではこれらがなくなり、バッテリー、モーターといった固有部品が必要になる。この中でバッテリー価格が車両価格の4~5割近くを占めるほど高い。そのため日本では一般的なクルマをガソリン車からEVに替えた場合、原価は6割近くも上昇すると言われている(図1)。

    補助金削減と規制が逆風

     原価が高く、そのため販売価格も割高というEVの問題は、今までは、立ち上がって間もない市場に特有の要因で顕在化してこなかった。その要因の一つ目は、「補助金」の存在だ。ガソリン車より高いEVに対して、各国が購入補助金を交付していたため高い原価が相殺されていた。

     二つ目は、主にEVを売ってきた主体が、株式市場で成功した新興企業だったことだ。例えば、世界販売台数1位の米テスラは2021年1月に時価総額で米ゼネラル・モーターズ(GM)やトヨタ自動車など世界の大手5社の合計を上回った。2位の中国BYDは元々電池会社で、03年に国営「秦川自動車」を買収して自動車製造を始めると、EV化のトレンドに乗り、現在の時価総額は上海汽車や長城汽車といった既存大手を抜いて中国メーカーのトップに立った。テスラもBYDも、本業のEV生産で赤字が続いても、市場から調達した潤沢な投資資金を使って、EVの開発・生産を進めてきた。

     しかし、これら新興に遅れてEVに参入した既存の大手自動車メーカーには、「原価」の高さが大きな壁になる。

     まず、(1)EVの普及につれて補助金は将来的に減額もしくは支払われなくなる公算が大きい、(2)今のところはガソリン車やハイブリッド車(HV)の収益でEV事業で計上する赤字を補填(ほてん)できても、各国のガソリン車規制でそれが難しくなる──というダブルパンチになる。

     そこで注目されているのが、販売・広告宣伝関連費用の圧縮だ。一般的なクルマは、販売価格を100とした場合、大まかにクルマの原価+開発・生産関連費用が70、メーカーと販売店の利益が…

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