国際・政治

アフガニスタン政府崩壊 「敗北」した自由主義諸国 タリバンの結束は未知数=篠田英朗

 タリバンは外国人の占領を終わりにする、というスローガンで20年間の戦争を遂行してきた。その過程でタリバンに参加した人々が、統治活動を通じても結束し続けられるかは、未知数だ。最高指導者のハイバトゥラー・アクンザダ師は、カブール陥落後8月末まで、まだ発言しておらず、姿も見せていない。アクンザダ師の動向がカギを握る。

 米国は、タリバンの政治部門責任者のアブドゥル・ガニ・バラダル師を信用する形で、撤退に伴う一連の政策を進めてきた。だがより過激な人物がタリバン内に存在する。指導部の構成や力関係は、まだ流動的なところもあるだろう。

 末端の兵士層や潜在的支持者層を指導部がつなぎ留め続けていくため、イデオロギーや財政基盤などを確立できるかも焦点になる。

 予測していなかった撤退完了前のアフガニスタン政府の崩壊で、米国の威信は大きく傷ついた。反米的な傾向を持つ中国などの周辺国の影響力が、少なくとも相対的に高まることは間違いない。アフガニスタンにおける自由主義諸国の「敗北」は、米中競争時代の世界的な趨勢(すうせい)にも影響していく。

 退避が完遂できなかったことは、今後の各国の政策に対するさらなる大きな制約となる。わかりやすく言えば、人質を取られている状態にある日本などの諸国は、タリバンを刺激しすぎる大胆な行動はとれない。ただしタリバンを信用しすぎるわけにもいかない。厳しい駆け引きになる。

ISも不安要素

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週刊エコノミスト

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