経済・企業

商社決算を斬る 低い投資効率浮き彫りに 投資巧者の伊藤忠が頭一つ先行=成田康浩

    こうした需給動向を背景に穀物やパルプ、化学品など商品市況が上昇しており、商社のトレーディング事業もマージンが拡大しやすい状況となっている。事業環境の追い風もあり、大手5商社の22年3月期の連結純利益(親会社株主利益)は全社で過去最高益を更新すると野村証券では予想している。特に、三井物産や伊藤忠商事、三菱商事の利益は7000億円前後と高い水準となろう(図1)。

    低下するROEと株価

     業績の好調さを背景に株価も堅調ではあるが、株価水準では21年は伊藤忠商事の株価が最高値を更新した以外は、過去の高値を2〜4割弱程度下回るなど、株式市場での評価は業績ほど高くない状況にある(図2)。

     背景には、機関投資家が重視するROE(親会社株主利益÷株主資本)が低下傾向となっていることが挙げられる。

     実際に、株価がピークだった08年3月期の大手5商社の平均ROE(加重平均)は17・9%だったが、過去最高益の更新が見込まれる22年3月期でも平均ROEは14・8%と予想している(図3)。

     各商社もROEの維持向上を課題として捉え、配当性向の引き上げや自社株買いの実施など、株主還元策は拡充している。

     こうした株主還元策の拡充は評価できるものの、利益の成長期待を高められるかがより重要と考えている。過去から、商社は資源権益や企業買収など、事業投資をてこに成長を図る方針を採ってきたが、投資額の大きさに対して十分なリターンが出ていないことが課題となっている。

    生活消費に強い伊藤忠

     実際に、過去からの資産の売買損益や減損など評価損益のトレンドを、各社が開示している一過性損益の計上額の推移(図4)から見ると、大手5社合計では過去11年で2・8兆円を超える損失超過となっている(表)。

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     伊藤忠商事の株価は同業他社比で上昇幅が大きいが、過去の一過性の損失は同業他社比で低いほか、連結純利益の成長という面でも他社を上回っていることが評価されていると考えている。

     こうした格差の背景にはいくつかの要因があると考えているが、一つには、同社が早くから食品やコンビニ、生活資材といった強みを持つ生活消費分野を注力分野として経営資源を絞り込んだことが挙げられよう。

     同業他社の減損では知見の少ない分野での大型投資が減損につながるケースが多かった。

     また、収益面では、同社が早くから赤字事業からの撤退やテコ入れを進めてきたことで利益の底上げが図られていることや(図5)、非資源分野の経費率(販管費÷売上総利益)を意思を持って下げるなど(図6)、業績が過去最高益の更新を続ける中でもコスト削減を図ってきた成果が差となっていると考えている。

     こうした赤字事業や低収益資産の入れ替えについては、各社でも取り組みの強化が図られるなど、セクター全体で意識が高まっている。実際に、三菱商事はコロナ禍の影響もあって業績が悪化した21年3月期…

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