経済・企業 人権
ユニクロも輸入を差し止められた「人権」リスクの正体=北島純
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米中対立で生じた「人権リスク」 企業活動への底知れない影響ー=北島純
日本企業が「人権リスク」に直面している。商品の製造工程や原料の調達網(サプライチェーン)で、児童労働や奴隷的拘束といった人権侵害への関与がないかだけでない。米バイデン政権は7月に公表した勧告文書で中国の少数民族ウイグル族に対する「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を認定。米中対立が激化する中で新たに国際問題化した「政治的な人権リスク」に対しても、いかに対処するかが問われ始めている。
象徴的な事案となったのが米国でのユニクロ製品輸入差し止め事件だ。米国土安全保障省税関・国境警備局(CBP)が今年1月、ロサンゼルス・ロングビーチ港に荷揚げされようとしたユニクロ製シャツに対して通関保留命令(WRO)を通知し、米国への輸入が実質的に差し止められた。通関保留命令とは、強制労働や囚人労働によって製造された商品の輸入を禁止する関税法307条に基づく米税関当局の行政処分だ。
中国・新疆ウイグル自治区での強制労働やジェノサイド疑惑については、対中強硬姿勢を強めていたトランプ政権時代の昨年7月、中国共産党傘下の「新疆生産建設兵団」(XPCC)に対して米財務省が在米資産凍結などの金融制裁を科したのを皮切りに、11月にはXPCCが生産する「綿製品」の輸入を禁止するWROが発令されていた。ユニクロ製品の輸入差し止めはこのWROに違反するとして処分を受けている。
ユニクロを展開するファーストリテイリング(ファストリ)は今年3月、反論書を提出したが、米当局はこれを認めず、ファストリ側の異議申し立てと再審査請求も5月に退けられた。ファストリの柳井正会長兼社長は4月、2021年2月期決算発表の記者会見でウイグルに関する質問に対して「人権問題というより政治問題なので、ノーコメント」と発言したが、これは米国当局との係争の最中のことだった。
ファストリ側は「強制労働の事実はない」と説明しているが、米当局は「XPCCによるウイグルでの強制労働に一切関係がないことの証明」を要求しており、議論は平行線をたどっている。バイデン現政権でもこのような対中強…
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週刊エコノミスト
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