円安防衛術1 「円資産だけ」はリスク大 外国株投信など活用がカギ=大山弘子
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円の為替相場では、貿易収支の趨勢(すうせい)的な低減や、日本国内の金利が諸外国に比べて低水準に据え置かれて、内外金利差が今後、拡大見通しであることから、長期的には円安・ドル高が進む可能性がある。この先に一段の円安が進むことになれば、食糧やエネルギーなどの輸入価格が上昇することで国内物価を押し上げ、家計の圧迫要因となることも考えられる。長年続いたデフレが終わり、インフレに転じれば円の預貯金の価値は目減りする。インフレはさらなる円安を招く要因にもなる。
だが、資産の一部に外貨建ての資産を組み入れていれば、その部分は円安による為替差益を得ることができるので、家計圧迫を緩和し、資産価値の低減を相殺する効果が期待できる。為替相場が円安に向かう可能性が高いことを前提にするならば、日本円だけで資産を持つことは、資産の形成・防衛の両面からリスクともいえる。そうした環境下では、外貨建ての金融資産に投資することが重要になりそうだ。
低金利で株式にメリット
外貨建ての金融資産には、外貨預金や外国債券、外国株式(個別株)、外国株式や外国債券を投資対象とする投資信託などがある。しかし、主要国で低金利政策が続くなかでは、外貨預金や外国債券は、円安による保有資産の価値の目減りを低減することができても、資産を増やすことにはつながりにくい。
その点、外国株式であれば、円安による資産価値目減りの低減効果に加えて、株式の値上がり益や配当金も期待できる。ただし、値上がりが期待できる銘柄を選ぶための選択眼が不可欠だ。
また、一つの金融商品に多くの資金を投入すると、その金融商品が大きく値下がりしたときに、自分の資産も値下がりすることになる。そのため、資金を複数の投資先に分散することでリスクを軽減することが肝要だ。分散投資には、株式や債券など資産の種類、対象地域、投資タイミングをそれぞれ分散する方法がある。外貨建ての金融資産への投資が初めての場合には、外国株式を投資対象とした投信が選択肢となり得るだろう。
安いインデックス型
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投信は、インデックスファンドとアクティブファンドの2種類に分けることができる。インデックスファンドは、日経平均株価や米国の主要大型株で構成するS&P500指数などの指数に連動するように設計された投信だ。アクティブファンドは、指数を上回る、または指数にとらわれずにリターンの獲得を目指す。ファンドの運用担当者が調査や分析を通じて優良な銘柄を厳選して運用するため、インデックスファンドに比べて運用管理費用(信託報酬)などの手数料が高い傾向がある。この運用管理費用は、投信を保有している間、ずっとかかり続けることに留意が必要だ。
外国株の投信では、低コストのインデックスファンドが選択肢の一つとなる。例えば、米国の金融情報会社MSCIが算出する、先進国(23市場)の株式を対象とした指数である「MSCIワールド・インデックス」や、先進国(23市場)と新興国(27市場)の株式(大型株と中型株)を対象とした「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」などの指数に連動するインデックスファンドに投資することが考えられる(表1)。
投信の場合には、定期的に一定額、投信を積み立てる投信積み立てという方法で、タイミングを分散して投資することが可能だ。投信の値段である基準価額が安いときには多く、高いときには少なく買い付けることができるので、平均買い付け価格を平準化する効果が期待できる。いったん設定すると自動的に買い付けてくれるので、購入するタイミングを考える必要もない。
海外高配当株…
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週刊エコノミスト
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