経済・企業

Q&Aで解説 ドル・円だけでは見えない為替レートの読み方=山口範大

    Q&Aで解説 ドル・円だけでは見えない為替レートの読み方=山口範大

     通貨の交換比率である為替レートは2通貨間だけでは、本当の実力はわからない。基礎からひもとく。

    Q ドルと円などの通貨の交換比率である為替レートには、2通貨間だけでなく、いろいろなものがあるが、何がどう違うのか。

    A 為替レートといえば、代表的なものはドルと円、ユーロと円のような通貨の交換比率であるが、これはあくまで数ある通貨のうち、2通貨だけを取り出した名目的な交換比率にすぎない。例えば、円が対ドルで上昇していても、他の通貨に対しては下落している、というケースもある。ドル・円での円高=全般的な円高でない点には注意が必要だ。円相場の包括的な動向を測るためには、さまざまな通貨との交換比率を貿易額などで加重平均した名目実効為替レートを参照することが有用である。

     もっとも、為替レートの実体経済、特に貿易へのインパクトを測るうえでは、通貨の名目上の交換比率ではなく、物価水準の違いを考慮した実質為替レートが重要な意味を持つ。仮に名目の為替レートが変動していない場合でも、自国でインフレが生じていれば、自国製品の輸出価格は上昇、自国通貨高と同じ効果を持つためだ。この点について、内外の物価格差を考慮するため、名目の為替レートに「外国物価÷自国物価」を乗じたのが、実質為替レートである。

     この実質為替レートを、名目実効為替レートと同様に加重平均したものが、実質実効為替レートであり、言わば通貨の真の実力を示す。なお、名目・実質とも実効為替レートはインデックスのため、数値が大きいほど円高、小さいほど円安となる。円の実質実効為替レートを見ると、足元では円安が進行しており、すでに安倍晋三政権下でのボトムの2015年や、プラザ合意以前の1980年代前半とほぼ同じ水準にあることが分かる(図1)。

    Q 為替レートを決める決定要因は何か。

    A 日々の為替レートはさまざまな要因で変動するが、長期的なトレンドを規定するのは購買力平価である。

     購買力平価とは、国内外で同一財が同一価格となるという一物一価の原則が成り立つと考えた場合に、外国の財価格と国内の財価格をバランスさせる為替レートである。購買力平価の考え方には、各時点でバランスが成立するとする絶対的購買力平価と、過去のある一時点を出発点として、そこからの内外物価上昇率格差が為替レートの収斂(しゅうれん)先と考える相対的購買力平価の2種類がある。実際の為替レートとの比較では後者が参照されることが多い。ドル・円では、米国の物価上昇率が日本を上回るなか、長期的に購買力平価面から円高・ドル安圧力がかかってきた。

     より短期的には、為替レートは国内外の金利差の影響を受ける。外国の金利が上昇すると、国内の投資家にとって、国内資産よりも外国通貨建ての資産で運用した方が有利となるため、投資家は保有する資産を外国通貨建てへとシフトさせる。この際に円が売られる一方で、外貨が購入されるため、円安・外国通貨高につながる。

     一般に為替レートと最も相関が高いと考えられているのは、2年債や5年債などの中期ゾーンの金利差であり、最近では6月、米国の早期利上げが意識される中で、米国の中期金利が上昇し、米国の長期金利が低下傾向となる中でも対ドルでの円高進行は限定的という局面がみられたことも記憶に新しい。

     また、為替レートは通貨の需給の影響も受ける。このうち、財・サービス、所得の取引に由来する通貨需給を反映するのが経常収支であり、恒常的な経常黒字国・地域である日本やユーロ圏には、需給面から通貨高圧力がかかることとな…

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