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国際・政治 ワシントンDC

米国社会を分断 中絶を制限したテキサスの州法に埋められた奇策とは?=峰尾 洋一

全米に議論を巻き起こした(ニューヨーク) Bloomberg
全米に議論を巻き起こした(ニューヨーク) Bloomberg

テキサスの中絶制限法 違憲判断かわした奇策=峰尾洋一

 2015年公開の映画「愛しのグランマ」は、不本意に妊娠したことが判明し、その日の夕方に中絶の予約をしながら、費用支払いのめどが立たない孫娘のために、祖母=グランマが金の工面に奔走する一日を描くコメディー映画である。その中の一シーン。中絶を行う医療機関の前で、活動家の親子が中絶反対を唱えている。その子どもの方に向かってグランマが「もっと賢くならなきゃね」と、中絶反対者をあざけるような言い方をし、子どもに殴打される。中絶賛成と反対で国を割って意見がまとまらない米国が凝縮されている場面であった。

 中絶は米国の政治を考える上で避けて通れない課題だ。民主党の多くを占める革新派は「中絶選択権の優先」を、共和党の多くを占める保守派は「生命の優先」、すなわち中絶制限を主張する。

 その中で9月以降話題となっているのが、テキサス州で成立した中絶を制限するテキサス鼓動法(Heartbeat Act)だ。同法は胎児の鼓動が始まる妊娠約6週以降の中絶施術・ほう助を禁じている。同様に妊娠後短期間で中絶を禁止する州法は、ノースダコタやジョージアなど複数の保守派州でも成立してきた。だが、これらは妊娠約24週までの中絶を認めた1973年の最高裁判決(ロー対ウェード判決)により施行が阻まれてきた。

 同判決は中絶の判断を女性の権利と認め、この権利の侵害を違憲とした点で画期的だった。ただ、同判決と相反する州法、例えば、より厳しい中絶制限の法律を無効とするには、州の主権の壁を乗り越える必要があった。そこで、問題の解決には「州公務員の違憲な法執行は州の主権の範囲外であ…

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