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米民主党の内部分裂で人気低迷バイデン政権 来年の中間選は早くも敗戦濃厚?
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米民主党は中間選へ視界不良 議席数変更も共和党に追い風=中岡望
米国社会を根底から変えたルーズベルト大統領の「ニューディール政策」(1933~37年)に匹敵する大胆な政策を打ち出すことで「アメリカを復活させる」という野心的な計画を打ち上げて大統領になったバイデン氏だが、民主党内での中道派と進歩派の対立で政策実現のめどが立たず、支持率が急速に降下している。このままでは来年11月8日に行われる中間選挙で民主党が大敗する可能性もある。
民主党支持層に異変
米調査会社が公表する支持率も芳しくない。リアル・クリア・ポリティクスによるとバイデン大統領の最新の平均不支持率は52・1%で、支持率の43・7%を上回っている。政権発足直後の1月27日の調査では、支持率55・5%、不支持率36%であった。しかし支持率は徐々に低下し、8月20日に支持率は47・6%にまで低下し、不支持率の48・6%を下回った。ラスムセンの調査では支持率が42%であるのに対して、不支持率は56%に達し、その差は14ポイントとなっている。
支持率の大幅低下の直接の要因はアフガニスタン撤退を巡る混乱であるが、同時に民主党内の進歩派と中道派による対立で予算成立が遅れていることや移民政策の一貫性の欠如、コロナウイルス感染の終結が見えないこと、景気回復の足取りが重いことなどが挙げられる。端的に言えば、政権発足後10カ月の間にバイデン大統領は目立った成果を上げることができなかったのである。
中間選挙は、もともと大統領に対する信任投票の意味合いもあり、与党が議席を減らす傾向が見られる。戦後、中間選挙で与党が議席を増やしたのは、クリントン政権下で行われた98年の中間選挙とブッシュ政権下で行われた2002年の中間選挙のわずか2度である。いずれも、大統領の支持率は60%を超えていた。バイデン大統領の低支持率を考えれば、来年の中間選挙で民主党は大きく議席を減らす可能性がある。
世論調査の内容を検討してみると、民主党が置かれている状況はさらに厳しい。民主党の伝統的な支持基盤である黒人やヒスパニック系、女性、マイノリティー(少数派)に顕著な“バイデン離れ”が見られることだ。ピュー・リサーチ・センターの調査によると、7~9月に黒人有権者のバイデン支持率は18ポイント低下している。さらにヒスパニック系有権者で16ポイント、女性で12ポイント低下している。民主党支持層の間でも支持率は13ポイント低下している。大統領選挙を勝利に導いた無党派層の支持率も54%から42%へ低下している。
共和党の地盤州で議席増
現在、米議会の民主党と共和党の議席は拮抗(きっこう)している。前回の選挙で民主党は過半数を確保したものの議席を減らして222議席であった。共和党は議席を増やし213議席であった。過半数は218議席である。投票率が大幅に増え、大統領選挙で勝利したにもかかわらず、民主党は議席を増やすことができなかった。共和党が前回の選挙より5議席増やせば、過半数を制することになる。共和党が下院の過半数を獲得する可能性は極めて高い。
上院は現在、両党とも50議席で拮抗している。共和党が1議席増やせば上院の過半数を制することになる。中間選挙では上院の34議席が改選される。党派別では民主党が14議席、共和党が20議席である。現時点で5選挙区で現職の共和党議員が引退を表明している。その数はさらに増える可能性もある。選挙では現職が圧倒的に有利であるが、これらの選挙区では両党の新人同士の戦いとなる。その限りでは、民主党が過半数を維持する可能性は残っている…
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週刊エコノミスト
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