経済・企業 中国3大危機
拡大する格差を看過できず、習近平は「共同富裕」を進める=三尾幸吉郎
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共同富裕 看過できなくなった「格差」 習氏の真意は毛沢東と一線=三尾幸吉郎
中国で富裕層に対する締め付けが厳しさを増している。アリババなどの巨大企業や著名芸能人に高額な罰金を科したり、富裕層に対して「第3次分配」(高額の寄付)を事実上要求したりしている。こうした動きの背景には貧富の格差拡大がある。国際連合開発計画の報告によれば、中国では上位1%の富裕層が得ている所得が全体の13.9%に達している。
これは米国の20.5%ほどではないが、自由資本主義の日本・欧州よりも高く、「社会主義」を標榜(ひょうぼう)する中国にとっては看過できない大問題である(図)。そして習近平政権は社会主義の本質的要求である「共同富裕(共に豊かになる)」に向けて動き出すこととなった。共同富裕という言葉は、中国建国の父・毛沢東が1953年に使い始めた。分かりやすかったため、社会主義に向けて庶民を結束させる求心力となった。
一方、後に改革開放の総設計士として中国を世界第2位の経済大国に導くことになる鄧小平は、毛沢東の死後、「先富論」と称する基本原則を唱えることになる。先富論では、「一部の地域や一部の人々が先に富を得てもよく、後で他の地域や他の人々を助けて、徐々に共同富裕に到達することにしよう」と主張し、まずは経済発展を急ぎ、それが軌道に乗ったあとに共同富裕を目指すこととした。
鄧小平は共同富裕を軽視してはいなかったが、毛沢東が目指す絶対平等主義の共同富裕を進めると、共同富裕にならず「共同貧困」に陥りかねないという懸念を抱いていた。そこで問題となるのが、習近平国家主席の共同富裕に対する真意である。今年8月17日に…
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週刊エコノミスト
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