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中国 需給窮迫と環境政策で石炭枯渇 電力不足慢性化で成長力低下も=丸山健太
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中国各地で電力不足が深刻化している。9月中旬以降、江蘇省などいくつかの地方で企業の生産に制限が加わるなど、経済活動にも影響が及んでいる。
電力不足の原因は電力需給の窮迫である。需要面をみると、コロナ禍からのV字回復で電力消費の半分を占める製造業の生産活動が過熱したことに加え、今夏の猛暑で電力消費の15%を占める家庭で大きく伸びた。
供給面では、電力供給の7割を占める火力発電の主燃料である石炭不足の影響が大きい。天候不順による水力発電の減少で、火力発電への依存度が高まる中、石炭供給の9割以上を担う国内生産が安全対策の強化などにより落ち込んだ。
また、主要輸入先である豪州からの石炭輸入を、同国との関係悪化により停止したことで石炭不足が深刻化した。さらに、石炭不足で石炭価格が高騰する中、政府の電力価格統制により価格転嫁できず、利益が急減した一部の発電会社が供給を絞ったことも、電力不足に拍車をかけた。
今回の電力不足は、これらのさまざまな要因が重なったことで生じたが、中国政府の環境を重視する政策が、電力需給の窮迫を招きやすい状況を生み出したことにも注意が必要である。
政府は2016年以降、過剰生産能力解消のため、環境への負荷が大きい石炭の生産能力を削減してきた。加えて、60年までのカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)達成を目標に据え、今年3月に決定した第14次5カ年計画では、計画期間中にGDP(国内総生産)1単位当たりのエネルギー消費量、二酸化炭素排出量をそれぞれ13・5%、18%削減するという目標値を示した。これらの脱炭素政策の推進により、電力供給の中核となる石炭の供給力…
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週刊エコノミスト
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