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会社の信念でイスラエル市場を撤退した米アイスクリームメーカーの投げかけたESGの大問題=中園明彦
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アイスクリーム大手のイスラエル市場撤退が物議=中園明彦 パレスチナ占領への抗議
我が家のお気に入りのアイスクリームの一つにベン&ジェリーズ(B&J)というブランドがある。バーモント州でベン・コーエン氏とジェリー・グリーンフィールド氏が1978年に共同で創業した会社で、今では高級アイスクリームブランドとして世界38カ国に展開している。日本にも一時進出していたが、数年前に撤退したと聞いている。
このB&Jが7月、2022年末をもってイスラエル市場から撤退すると発表し、物議を醸している。アイスクリームとイスラエルの関係に、筆者は首をかしげた。B&Jの独立取締役会の発表によると、イスラエルがパレスチナ自治区を国際法上不当に占領していることへの抗議であることが分かった。創業者の2人はユダヤ系米国人であり、この決定は決して反イスラエルの動きでなく、あくまでも会社の信念に合致しない社会問題に対し取った行動であると説明している。
社会正義と現実の間で
2人は起業当初よりビジネスを利用していかに社会を正しい方向に導けるか試したいと発言していた。B&Jは、世間でESG(環境、社会、ガバナンス)という言葉が使われ出すかなり前から社会問題に積極的に取り組む会社として知られてきた。12年からは社会活動家をフルタイム被用者として迎え入れ、ESGを重視した経営に拍車がかかっている。
B&Jの発表に対し、米国のユダヤ人社会やイスラエルは「反ユダヤ」の動きであると即座に反撃した。米国は州ごとに教師や警官といった公務員の公的年金基金を運用している。イスラエルは、それらの年金基金に対して、B&Jの親会社であるユニリ…
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週刊エコノミスト
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