経済・企業 円安 原油高
原油7年ぶりの80ドル台 OPECプラス増産見送りで冬に向け価格はさらに上昇か=芥田知至
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米国産原油の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、10月25日に一時1バレル=85・41ドルと7年ぶりの高値をつけた。
原油高の背景には複合的な要因がある。まず、コロナ禍からの経済活動の再開を受けて石油需要が持ち直していることがある(図)。世界の石油需要は来年前半にもコロナ前の水準を回復するとみられている。
また、産油国は原油供給を大幅には増やさない方針である。OPEC(石油輸出国機構)にロシアなど非OPEC産油国を加えた「OPECプラス」は、8月以降、毎月日量40万バレルのペースで協調減産の緩和(増産)を行っている。12月の原油生産方針を決定する11月4日の閣僚級会合でも、増産幅を小幅にとどめ、大幅増産を見送った。
8月下旬に米メキシコ湾の産油地帯がハリケーン「アイダ」に被災し、その復旧に時間がかかったことも原油需給をタイトにした。加えて、欧州では、発電用などで、高騰した天然ガスの代替として石油に需要がシフトした。中国では、石炭不足や電力不足が経済の制約要因になった。世界的にエネルギー需給の逼迫(ひっぱく)が警戒されていることが、原油の先高観測につながった面もある。
足元では、ドル高がドル建てで取引される原油の割高感につながって原油価格の抑制要因になっているが、こうした複合要因を背景に原油相場は高値を追う動きとなった。
慎重な産油国側
11月のOPECプラスの閣僚級会合を巡っては、影響力の大きい産油国であるサウジアラビアやロシアが大幅増産には慎重な姿勢を示す一方で、米国や日本など消費国は産油国に大幅増産を要請していた。10月30日には、バイデン米大統領が20カ国・地域(G20)の主要エネルギー産出国に対して増産を要請したと報道された。
しかし、アルジェリア、クウェート、イラクなどからもOPECプラスの現行計画は、原油需給を均衡させるのに十分との見方が示された。産油国としては、わずか1年半ほど前にマイナス価格をつけるほど石油需給が緩和したばかりであり、需要の先行きを慎重にみているものと思われる。
OPECプラスによる大幅増産見送りの決定は、予想通りと受け止められた。その日、サウジの国営テレビによる同国産油量が日量1000万バレルを超えるとの報道が材料視されたこともあり、原油相場は下落した。
しかし、北半球はこれから需要期である冬場を迎える。…
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週刊エコノミスト
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