経済・企業

今回の量的緩和縮小では理論上、長期金利上昇が限定的であるからくりとは?=前田 栄治

    Interview 前田栄治 今回の緩和縮小のみでは長期金利上昇は限定的 

     <Interview>

     コロナショックを受けての資産買い入れの意味合い、量的緩和縮小(テーパリング)による長期金利への影響を元日銀理事の前田氏に聞いた。

    (聞き手=種市房子・編集部)

    ── 2012年9月〜14年10月に行われた量的緩和第3弾(QE3)時の縮小と、今回の量的緩和の縮小の相違は。

    ■QE3は、リーマン・ショック(08年)という金融発の経済危機により、景気低迷が長引いた中、「量的拡大が経済・物価を押し上げる上で有効」という認識で導入された。だから、テーパリングについても、市場が金融引き締めへの転換であり、利上げも近いと感じ、長期金利が上がった。13年5月に当時の米連邦準備制度理事会(FRB)議長であったバーナンキ氏がテーパリングを示唆したことによる金利上昇(バーナンキ・ショック)などは、そういうメカニズムではないだろうか。しかし、20年春からFRBが行った資産買い入れの目的は多少ニュアンスが異なる。

    ── その目的とは。

    ■実体経済における一時的なドル資金需要の急増に応え、金融市場の安定化を図ることに主眼があった。20年春の危機は実体経済発だ。新型コロナウイルス感染拡大により経済活動が一気に停止して、企業が資金繰りに窮した。企業がドル資金を確保するための米国債売りも増えた。ドル資金の需要曲線が右シフトした状態だ(図)。

     需要曲線の右シフトは、同じ額の資金を得るために、高い金利を支払うということを意味する。これに対して、FRBは供給曲線も右シフトさせるべく、資産を買い支えた。需要曲線も供給曲線も共に右シフトすれば金利の上昇は抑えられる。

    利上げためらえば長期金利上昇も

    ── 経済危機が一服すると需要曲線、供給曲線はどう変化するか。

    ■民間企業の緊急の資金需要も一服し、財政の緊急出動で増発していた国債の発行額も減少した。需要曲線は左にシフトし平時の場所に戻る。だから、FRBも供給曲線を左にシフトする。結果として需要と供給が均衡する金利はさほど変わらない。これが、今回のテーパリングだけでは長期金利が上がらないからくりだ。ただ、マーケットは過敏に反応しやすいので、「テーパリングと利上げは別物」といった丁寧なコミュニケーションも重要だ。

    ── 理論上、テーパリングだけでは長期金利が上がらないとして、今後、金…

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