経済・企業

米議会 二つの「インフラ法案」可決へ 待ち受けるのはバイデン政権批判とインフレ懸念=井上 祐介

    ハードインフラ法案の下院可決はバイデン政権の成果となるか?(ペロシ議長=中央) Bloomberg
    ハードインフラ法案の下院可決はバイデン政権の成果となるか?(ペロシ議長=中央) Bloomberg

    議会混乱の余波 インフラ法成立も政権に逆風か くすぶり続ける債務上限問題

     米国株は新型コロナウイルスの世界的な大流行による急落後、1年半にわたりほぼ一本調子で上昇を続けてきたが、2021年9月に変調の兆しがみられた。S&P500種指数は1カ月間で約5%調整し、20年3月以来の下落幅を記録したのである。背景には、中国不動産開発大手・中国恒大集団の債務不履行問題に加え、米国経済の減速懸念やインフレの長期化見通しなどさまざまな要因が挙げられるが、連邦政府の新年度予算と債務上限の引き上げを巡る議会の混乱も少なからず影響した。

    11年には国債格下げ

     9月の議会の動向を振り返ると、危ぶまれたのが政府予算の成立である。米国の連邦政府の会計年度は10月から始まるため、議会では例年、夏休み明けの9月に新年度予算の策定作業が大詰めを迎える。成立しない場合には約3年ぶりの政府機関閉鎖の可能性があったが、最終的には期限ギリギリに12月3日までの暫定予算が成立した。

     今年はこの新年度の開始時期に政府債務の上限問題が重なった。連邦政府の債務上限は、議会の承認により財務省が発行できる国債の上限を意味する。政府は決められた範囲内であれば自由に国債を発行できるが、債務上限に到達した場合は新たな資金調達ができなくなり、国債の償還や利払いが滞るデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が生じる。

     かつては政府が資金を必要とするたびに議会が国債の発行などを承認していたが、第一次世界大戦中の戦費調達において一定の柔軟性を設けるため、債務の上限枠を定めることになった。債務の法定上限は定期的に引き上げられてきたが、近年では前例が崩れ、財政政策に対する立場の違いを強調するための道具として使われるようになった。

     11年には共和党内の保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会)」系議員が当時のオバマ大統領に財政赤字削減を迫り、債務上限問題が大きく注目された。土壇場での妥協案の成立でデフォルトは回避されたものの、金融市場は大混乱となり、米国債の格下げにつながった経緯がある。

     今回は、19年から2年間停止されていた債務上限が今年の8月に復活し、10月中旬までに上限に達すると試算される中、共和党は拡張的な財政政策を推進するバイデン大統領を批判し、債務上限の引き上げに抵抗してきた。最終的には、期限とされてきた10月18日の直前に与野党が合意し、債務上限を4800億ドル(約52兆円)引き上げる法案を可決した。この結果、12月3日ごろまでの連邦政府の資金繰りにめどが立ち、米国債のデフォルトはひとまず回避された。

     しかし、問題が解決されたわけではなく、予算と債務上限の期限は、ともに2カ月間先延ばしされたに過ぎない。しかも、共和党は債務上限でこれ以上の協力を拒む構えを明確にしており、上下両院で過半数を有する民主党は単独で問題に対処しな…

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