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リー将軍もジャクソン将軍も 南北戦争「南」の英雄の名が道路名から消える 米国の「リベラル化する空気」にあらがう人も=古本 陽荘
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“南部の英雄”冠した道路の名称変更議論に見る歴史認識
筆者が住んでいるのは米国の首都ワシントンDCの郊外、南部バージニア州の北部。行政区としてはフェアファクス郡に属する。ジョージ・ワシントン初代大統領のプランテーション跡地で、現在は観光地になっている「マウント・バーノン」も同じ郡にある。
そのフェアファクス郡の交通局から最近、一枚のはがきが届いた。米国の高速道路には番号とともに略称が付いていることが多い。この郡を貫く高速道路「ルート29」は「リー・ハイウエー」、「ルート50」は「リー・ジャクソン・メモリアル・ハイウエー」だ。はがきの趣旨は「ハイウエーの名前を変えたほうがいいと思いますか。オンラインで調査に協力してください」というものだった。
「リー」とは、南北戦争で奴隷制を維持しようとした南部連合の司令官を務めたロバート・リー将軍のこと。「ジャクソン」も、南部連合のストーンウォール・ジャクソン将軍からとったものだ。
バージニアはフェアファクス郡など北部で人口が増加傾向にあり、移り住んでくる人たちは人種も多様で、リベラルな考えを持つ人が多い。郡によると、リー・ハイウエーが命名されたのは1911年で、リー・ジャクソンの方は22年という。長年親しまれてきた略称だが、奴隷制維持のために戦った将軍に違和感を持つ住民が増え、今年7月から郡交通局が、名前を変えるべきかの審議を続けてきた。ウェブ参加と対面式を組み合わせた形の公聴会も数回開かれ、議論も公開されている。
ある黒人男性は「リー氏もジャクソン氏も今のフェアファクス郡を代表するような人物ではない」と主張。一方で、典型的な南部の町で育ったという白人男性は「黒人の歴史はしっかり教えられるべきだが、ハイウエーの名前を変えることがその適切な方法だとは思わない。対立をあおることになる」と名称変更に慎重姿勢を示した。バージニアでは、リー将軍の銅像…
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週刊エコノミスト
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