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テーパリング終了後何が起きる?マネタリーベースと株価から見えてくる来年末の不都合な株価予測=吉野 真太郎

さらば「カネ余り」 Bloomberg
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緩和縮小リスク1 米欧日で資金供給900兆円増 反動で米株は22年末に下落も=吉野真太郎

 2020年3月のコロナショック後、大胆な金融緩和・財政出動で先進国株価指数の上昇をけん引してきた日米欧の中央銀行。その一角、米連邦準備制度理事会(FRB)は11月2~3日(米国時間)に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で債券購入プログラムのテーパリング(段階的縮小)開始を決定した。

 FOMC後に発表された声明によると、(1)米国債で月間800億ドル(約9兆円)、政府系機関が保証した住宅ローン担保証券(MBS)で同400億ドルであった購入額を、11月から、米国債で同100億ドル、MBSで同50億ドルずつ減らしていく、(2)政策金利であり、短期の金利指標であるフェデラルファンド(FF)金利のターゲットレンジを0~0・25%に据え置き──を決定したという。FRBが目標としている「最大雇用」と「長期的な2%のインフレ率」の二つの課題を達成しつつあるため、テーパリング開始を決定したことがうかがえる。

 今後テーパリングが行われた場合、日米欧の株式市場の相場展開はどうなるのであろうか。

資金量と株価の相関

 まず、日米欧のマネタリーベース(中央銀行が世の中に供給するマネー)の月次推移を、13年7月末から見ていきたい(図1)。為替については、各月末のクロス円価格で円建て換算している。

 米国においては、14年10月にリーマン・ショック以来継続してきた量的緩和(QE1~3)を終了して以降、マネタリーベースは減っていたが、コロナショックにより再び方針を転換し、急増させた。足元のマネタリーベースの金額は2175兆円。コロナショック前の水準が約1300兆円だったので、ショック前後で増加したマネーは日米欧合わせて約900兆円になる。

 マネタリーベースの変化を受けて、日米欧の株価指数はどのような反応を示したのであろうか。13年7月末からの日米欧におけるマネタリーベースの合計金額(円建て換算)と、S&P500種指数(米国)、DAX指数(ドイツ)、東証株価指数=TOPIX(日本)の株価指数の推移を比較したい(図2)。すると、マネタリーベース残高の上昇と連動する形で各国の株価が上昇基調となってきているのが分かる。

 注目は米国が14年10月、当時行っていた量的緩和を終了して以降の株価の推移だ。実質的には15~16年前半において、日米欧のマネタリーベースの増加が止まったが、その間の株価は軟調な動きになっている。つまり、マネタリーベースと株価には強い相関関係があるといえる。

縮小即株価下落でない

 ここで「テーパリングが始まる=株価の下落」ではないことを確認しておきたい。以前の量的緩和においてテーパリングが始まったのは14年1月であり、終了したのが同年10月だった。しかし、この10カ月間において株価は下落しているかというと、下落し始めたのは15年夏場ごろからであった。つまり、テーパリングを行っている期間よりも、テーパリングを終えた後、半年程度たったあたりから、株価が軟調になる可能性があるといえる。

 この経験則を今回のテーパリングに当てはめてみよう。FRBの声明によれば、国債・MBS合計で月間150億ドルずつ買い入れ額を減らしていく。このペースならばテーパリングは8カ月で終了する。つまり、11月開始、22年6月終了だ。株価は、その半年後である22年末ごろから軟調な展開になる可能性がある。

 投資家や市場参加者が一番知りたいのは、どの程度株価の調整があるのかという点であろう。これは、日米欧のマネタリーベースの…

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週刊エコノミスト

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