経済・企業

出遅れ日本株の本当の理由は、「稼ぐ力」の危機的な弱さ=川北英隆

出遅れ日本株 半数弱がPBR1倍割れ 欧米に劣後する「稼ぐ力」

 来年4月4日に東京証券取引所が刷新される。東証1部市場がプライム市場に衣替えされ、同時に東証株価指数(TOPIX)の構成企業のハードルが高くなる。日本の上場企業に「活を入れる」のが目的である。

 米国やドイツと比較して日本の株価はさえない。例えば、リーマン・ショックの直前(2008年8月末)から21年9月までの主要な株価指数の上昇率を計算すると、年率で米国(S&P500)は9・7%、ドイツ(DAX)は6・8%なのに対し、日本(TOPIX)は3・7%であり、明らかに劣る。

 日本の株価上昇率が低い理由は簡単である。長期的に株価は企業業績を反映するわけだから、日本企業の業績が世界から引き離されていることを意味する。

 日本には世界をけん引している企業がある一方、企業価値を破壊している企業もある。TOPIXを構成する企業数は2200社に近いから、そのすべてに良好な経営を求めるのは難しい。とはいえ不良な企業が多すぎる。

 企業経営の質を投資家がどう評価しているのかは、株価純資産倍率(PBR)で判明する。長期間にわたりPBRが1倍未満であれば、企業は株式投資家の期待に応えていない。例えば、ある企業のPBRが0・8倍なら、その企業は株式投資家の期待する利益率(企業側から見ると「資本コスト」=株主資本と借入金のコストの加重平均)の80%の利益しか稼いでいない。言い換えれば、株式投資家が企業に提供している資産、すなわち純資産の20%は価値をまったく生み出していないとの評価を投資家が下している。

米国の3分の1以下

 PBRの市場平均値(今年9月末時点)を比べておく。米国は4・4倍、ドイツは1・9倍なのに対して、日本は1・4倍である。日本にPBR1倍未満の企業が多いから、この差が生じる。

 これを確認するため、東証1部上場企業を時価総額順(今…

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週刊エコノミスト

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