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キャンピングカーで地方観光がよみがえる 広島県の車中泊観光への挑戦=白鳥達哉
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観光課題の解決 アクセスの不便を車中泊で解消 広島県で実証実験始まる=白鳥達哉
地方にある観光課題の一つに「公共交通機関のアクセスの悪さ」がある。自然などの観光資源は豊富にあるものの、電車やバスの駅が近くにないために車で向かうしかない。しかし、レンタカー代も決して安くはないため、観光客が訪れづらい。そのような課題を解決するために、広島県三原市とベンチャー企業のCarstay(カーステイ:横浜市)が、10月からキャンピングカーや車中泊スポットを使った実証実験「三原車内寝泊(ねとまり)計画」を始めた。
カーステイはキャンピングカー・車中泊スポットのオーナーと借り手をつなぐシェアリングサービスを提供している。同社セールスマネジャーの野瀬勇一郎氏は、「地域に根差す新たな地域観光のモデルとして滞在型の観光を定着させることで、関係人口の増加を図る」と語る。
計画では、道の駅や商店、キャンプ場、温泉旅館などの駐車場や空きスペースを車中泊スポットとして解放、カーステイの専用アプリを通して宿泊先として貸し出す。加えて、広島県内や関西・九州などの周辺地域も含めて、シェアリングできるキャンピングカーの情報をアプリに公開する。また、宿泊プランとして地元の人間による観光ツアーや地方ならではの体験などの「文化体験」も提供していく。
車中泊スポットは1泊1500~2000円程度、キャンピングカーは1泊数千円~数万円で借りることができ、11月末の時点で車中泊スポットは20カ所、キャンピングカーは50台の情報が順次公開される予定だ。
低コストで町おこし
今回、広島県と協業することになった背景には、「ひろしまサンドボックス」という取り組みがある。同県では数年前から、人工知能(AI)やビッグデータなど最新のITテクノロジーを活用できる企業や人材を県内外から呼び込んで、産業・地域課題の解決を試行錯誤するオープンな実証実験の場の提供を始めている。
その中でカーステイは、観光スポットが散在しつつも、公共交通機関のアクセスが弱いことから旅行者の滞在日数が少なく、観光消費の増加につながっていない三原市の課題に着目。持続可能な新たな旅スタイルとして、「バンライフ(荷台スペースが広い車“バン”を家やオフィスのように作り変え、拠点とする新たなライフスタイル)」を根付かせることを提案した。
野瀬氏によれば、バンライフをうまく活用すれば、地元の温浴施設・飲食店・商店などの既存のインフラ施設と連携することで、新たな施設にコストをかけることなく、長期にわたって持続可能な地域観光基盤を確立することが可能になるという。
キャンピングカーを使った車中泊は、小さな子どもから、高齢者、ペットまで含めた大人数の旅行に向いており、多数の人間が市内を訪れる効果を狙える。また、宿泊施設とは競合になるようにも思えるが、野瀬氏自身の経験では、…
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週刊エコノミスト
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