経済・企業

大企業が「中小企業化」する歴史的必然=丹羽宇一郎氏

 <2022年の突破口 INTERVIEW>

 グローバル企業経営と、大国との外交の厳しい現実を知る論客に日本経済復活の処方箋を聞いた。

(丹羽宇一郎・元伊藤忠商事会長、元駐中国大使)

(聞き手=浜田健太郎・編集部)

── 近著の『会社がなくなる!』(講談社現代新書)で今後は大企業の中小企業化が進むと強調している。

■過去100年間で世界では企業の大規模化が進んだ。米自動車大手フォードが20世紀初頭に「モデルT」を開発して大衆化に先べんを付けた頃は、小規模メーカーが群雄割拠していたが、その後、3大メーカー(フォード、ゼネラル・モーターズ、クライスラー)に集約された。同じ規格の製品を大量生産してコスト削減を図るには規模のメリットが出る大企業化が必要だった。

 ところが、いまは多品種少量生産の時代に入り、大企業化するメリットがどんどん失われている。過去100年の大企業化とは逆のベクトルが生じている。世界の数十カ所に工場を持つ多国籍企業も、国・地域によって嗜好(しこう)にバラツキが出ることに対応せざるを得ない。画一的なモノを安く作ることが得意な大企業よりも、中小企業であっても個性的な製品を出す技術やセンスがあれば成長できるチャンスが増している。日本企業を数でみると99.7%は中小企業が占めているので、この流れは日本にとって悪いことではない。

── 今後、企業ではどのような変化が起きるのか。

■同一企業内の生産と販売、管理の各部門が分散して、給与にも格差が広がる。AI(人工知能)やロボットに任せる業務や工程が一段と増す。人間は何をすればよいのかというと、人間同士の付き合いの中で進める仕事がますます重要…

残り1161文字(全文1861文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事