経済・企業 日本経済総予測2022
22年も回復鈍い日本経済、企業の投資不足が真因=河野龍太郎
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2021年の日本経済は20年に続き、コロナ禍に翻弄(ほんろう)された。感染第3波到来で1~3月はマイナス成長に陥ったが、第4波到来で4~6月は鈍い回復にとどまった。その後、デルタ株蔓延(まんえん)による第5波の襲来で、内需が落ち込んだだけでなく、世界のサプライチェーン(供給網)の寸断で輸出も落ち込み、7~9月は再びマイナス成長を余儀なくされた。
現在は感染が落ち着き、10~12月は比較的高めの成長が期待されるが、通年で見ると、21年の実質国内総生産(GDP)の成長率はわずか前年比1・7%と、20年のマイナス4・6%もの落ち込みを穴埋めできずに終わる見通しだ。
変異株抑え込めるか
まず、簡単に世界経済のシナリオを確認しよう。感染力の強いデルタ株やオミクロン株の出現で、世界経済のシナリオは大きく変わった。ワクチン接種による集団免疫の獲得が困難になり、治療薬が普及するまで、経済の完全な正常化が難しくなったためだ。特に、世界経済を左右する米国では、需要が回復する一方、人々の労働市場への復帰が滞り、供給制約からインフレが加速している。
賃金上昇による2次的波及で、インフレ期待の上昇が懸念され、米連邦準備制度理事会(FRB)は来年半ばにもゼロ金利政策を解除し、金利正常化を開始するだろう。米国経済は回復傾向が続くが、当初想定されたより低い成長率にとどまる。
いち早くコロナ禍が収束した中国では、構造改革が継続され、成長ペースを抑える見通しだ。問題は、それが中国経済には長期的に良いことでも、世界経済の回復の足かせとなることだ。コロナ禍に脆弱(ぜいじゃく)な新興国経済は、米国の超金融緩和と中国の高成長に頼ってきたが、米中の政策転換は逆風となる。22年の世界経済は回復傾向が続くが、特に年後半はFRBの利上げが波乱をもたらすリスクがある。この他、新たな変異株の出現が世界経済への脅威となるかもしれない。遅れていたワクチン接種の挽回もあり、感染者数は抑え込まれているが、新たな変異株の登場で、日本経済は22年もコロナ禍に翻弄されるリスクがある。
岸田文雄首相は来夏に参議院選挙を控える。政権の命運が懸かるコロナ対策で脆弱だった医療能力の増強に奏功すれば、仮に第6波が訪れても、内需の急減速は回避され、基本的には回復傾向が続くはずだ。
22年前半には、コロナ禍前の19年10~12月の水準まで実質GDPが回復すると見られる。大規模な追加財政だけでなく、巣ごもりで家計に積み上がった貯蓄が回復を支える。20年度の家計貯蓄は、消費増税の影響で膨張していた19年度の水準を28兆円も上回った。
19年10月の消費増税の影響で、日本経済は19年10~12月に大きく落ち込んだ。経済正常化というには少なくとも19年7~9月の水準まで実質GDPが回復することが条件となるが、それは23年1~3月以降となる見通しだ(図1)。
出し惜しみで長期停滞
かくも日本経済の回復が鈍いのはなぜか。最大の理由は、企業部門がもうかっても利益をため込み、研究開発やIT・ソフトウエアなどの無形資産投資や賃金上昇を積極化させないからだ。経済協力開発機構(OECD)主要国中、日本のIT投資の低さは際立っている(図2)。
それが過去30年にわたる日本の長期停滞の真因にほかならない。経済危機が繰り返す中、リスクを取らず投資を抑え込んで、厚く資本を蓄えた企業の経営者ばかりが生き残っている。コロナ危機が訪れた際も、それまでリスクを取らず、借り入れや投資を抑え込んできたから、倒産や雇用リストラが避けられたと安堵(あんど)する大企業経営者が多かった。それが誤った成功体験となり、コロナ収束後、もうかっても投資を積極化させないことが常態化する恐れがある。
コロナ禍によって、デジタル投資やグリーン投資の重要性は強く認識されるようになったが、残念ながら多くの企業経営者は、デジタル投資をコスト削減の手段と誤認している。本来、デジタル投資によって組織の階層を水平化し、顧客情報を即時に業務に落とし込み、新たな付加価値の創造が可能となる。組織変革を棚上げしたままでは、デジタル投資を行ってもコスト削減にすらならない。
昭和時代の発想から抜け出すことができない大企業経営者も少なくない。良い商品を作って売り切る、という発想に終始している。デジタル時代においては、販売する製品は、あくまで顧客とつながるための媒介であり、販売した後にこそ、本領が発揮される。商品を通じ、新たなサービスを顧客に継続的に提供するとともに新たなニーズの掘り起こしにつながる。
日本でイノベーションが乏しいのは、大企業経営者に雇用維持の責務を課していることも影響している。新規事業に注力し、それが育つと、既存事業との共食いとなり、事業売却や雇用リストラが必要となる。それが容易では…
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週刊エコノミスト
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