経済・企業

さらばコロナ恐怖症、経済再始動を=藻谷浩介

繁華街もにぎわいがン戻りつつある(今年10月末、東京・新橋で) Bloomberg
繁華街もにぎわいがン戻りつつある(今年10月末、東京・新橋で) Bloomberg

予測2 コロナの影響 感染対策そろい「第6波」防ぐ 回復に必須のインバウンド再開=藻谷浩介

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 国際通貨基金(IMF)が10月にまとめた最新の世界経済見通しでは、2021年における日本の実質国内総生産(GDP)成長率は2・4%増で、主要7カ国(G7)の中で最も低い。22年は3・2%増でこれも日本が最低だ。内閣府が11月15日に発表の7~9月期の実質(季節調整値)GDPの1次速報値は年率換算で3・0%減と、筆者が在籍する日本総合研究所の事前予想(0・5%減)予想を大きく下回り、21年度の政府見通し(実質3・7%成長)の達成が危ぶまれている。

 20年の世界の総生産は前年比3・1%減で世界大恐慌(1929年)以来のマイナス成長だったが、主因はもちろん新型コロナウイルスの世界的な感染拡大である。では21年、22年と日本がG7で最低の成長率となる要因は、世界と同様にコロナの被害が深刻だからかといえば現実は正反対であり、21年の世界では、日本のコロナの感染状況は、ごく軽微な部類に入る(表)。

打撃が軽微なワケ

 海外から見れば、日本の状況は理解しがたいに違いない。筆者の観察では、経済の弱さは日本人のコロナ感染への過剰反応の結果であり、同じ反応が引き起こした感染抑止という結果と、表裏一体の関係にある。逆に言えば、日本がコロナを抑止しなかったから経済が悪化したというのは誤った認識だ。今年の夏、東京五輪開催への反対論が巻き起こったが、筆者は従来、コロナ禍の今年に五輪を開くなら、感染拡大を抑えている日本で、無観客で行うしかないだろうと指摘していた。五輪開催のために、高齢者を優先しながらワクチン接種のペースを加速させたところ、結果的にデルタ株の感染拡大による「第5波」において60歳以上の死亡者を大きく減らし、死亡率も劇的に低下した。

 図は20年1月に始まったコロナ禍における世界の「成績表」だ。死亡者数と感染者数が世界最悪の米国では人口の14%が感染して、死亡者は0・22%。これに対して日本は、図の左下、韓国、豪州、ニュージーランド、中国、台湾と同様に感染抑止に成功したグループに位置している。欧州や南北米州に比べ、東アジア・大洋州地域に位置するこれらの国々で抑止できたのは、第一には過去に類似の感染症が流行して弱い先行免疫があったとみて間違いないだろう。

 日本以外の国々で共通するのは国家の統制が利きやすいということだ。儒教的な価値観が支配する中国、台湾、韓国では上意下達による国家の管理が浸透しやすく、アングロサクソン系の豪州とニュージーランドも、英米とは違って、国家が出入国管理や国民の飲酒などに介入する傾向がある。一方、日本では儒教的な国家管理は弱いが、代わりに「世間の目」が強い。国民が好き勝手に行動して成り行きに任せつつ、社会の隅々に行き渡る相互監視と個々人の用心を通じて感染拡…

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週刊エコノミスト

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