経済・企業 世界経済総予測2022
「ワクチン格差」が残る限り新型コロナはいつまでも終息しない=前田雄樹
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新型コロナ まだまだ遠い完全終息への道 「ワクチン格差」が変異を生む=前田雄樹
中国・武漢で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されてから2年がたった。この間、ウイルスは変異を繰り返しながら世界中に広がり、12月上旬までに累計で2億6000万人あまりが感染し、520万人以上が死亡した。11月には南アフリカで変異株「オミクロン株」が確認され、完全終息にはなおも時間がかかる見込みだ。
日本では夏場の第5波が終息して以降、落ち着きを見せているが、世界に目を向けると10月中旬から再び増加に転じた。感染拡大の中心地は欧州で、ドイツやフランス、オーストリアなどで感染者が急増している。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は「ワクチンがパンデミック(世界的大流行)を終わらせたという誤った安心感が感染の再拡大を招いている」との懸念を表明する。
感染拡大の要因として考えられるのが、ワクチン接種から時間がたち、予防効果が薄れてきていることだ。ワクチンの効果は半年程度とされ、米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンの場合、感染予防効果は88%(2回目接種後1カ月以内)から47%(同4〜5カ月後)に、発症予防効果は96・2%(同7日以降2カ月未満)から83・7%に、それぞれ低下するとの報告がある。
米モデルナ製や英アストラゼネカ製も同様に時間の経過とともに効果が下がるとされる。2回接種率が8割を超える韓国では、11月に飲食店の営業時間を撤廃したが、同月下旬以降、感染者は連日過去最多を更新。予防効果が落ち、2回接種を完了した人が感染する「ブレークスルー感染」が相次いでいるとみられる。
「ブースター接種」急ぐ
再拡大に歯止めをかけようと、先進国は3回目の追加接種(ブースター接種)を急ぐ。米国や欧州連合(EU)の公衆衛生当局は従来、追加接種の対象を高齢者や重症化リスクの高い人に限定していたが、感染者の増加を受けて18歳以上のすべての人に拡大。イスラエルや韓国では、いわゆる「ワクチンパスポート」に有効期限を設け、3回目の接種を受けなければ証明書として無効になるようにすることで、追加接種を促す仕組みを採用した。EUでも同様の措置が検討されている。
日本は、2回目接種からおおむね8カ月たった18歳以上の人全員が追加接種の対象で、医療関係者の3回目接種が12月に始まった。欧米では子ども(5〜11…
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週刊エコノミスト
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