経済・企業 世界経済総予測2022
2022年・米中間選挙 「やりすぎ」バイデン政権に漂う民主党内の”諦め”=安井明彦
有料記事
米中間選挙 「やりすぎ」バイデン政権 民主党内に漂う諦めの空気=安井明彦
<2大政治イベント1>
米国の大統領にとって、就任後最初に迎える中間選挙は鬼門である。第二次世界大戦後では、13人中8人の大統領が上下両院で所属政党が議席を減らした。2022年11月の連邦議会中間選挙では、下院の全議席にあたる435議席と、上院の3分の1となる34議席が改選される。現在は上下両院でバイデン政権の民主党が多数党だが、共和党との議席の差は小さい。
民主党は下院で5議席、上院では1議席を失うだけで、多数党の座から陥落する。特に厳しいのは全議席が改選となる下院で、第二次大戦後の大統領のうち、最初の中間選挙で所属政党が議席を増やしたのは、02年の共和党のジョージ・ブッシュ(子)元大統領のみである(図1)。
当時のブッシュ氏には、特殊な事情があった。前年の同時多発テロの余波で、中間選挙当時の支持率が60%超と高かったのだ。バイデン氏の場合、21年12月初旬時点の支持率は、40%台前半と低い。第二次大戦後を平均すると、大統領の所属政党は、最初の中間選挙で下院の議席を約30減らしている。このままバイデン氏の支持率低迷が続けば、民主党は少なくとも下院で多数党を失いそうだ。
実際に米国では、中間選挙での民主党の敗北が、既成事実のように語られている。求心力を失ったバイデン氏が24年の次期大統領選への再出馬を断念するシナリオが取りざたされ、早くも後継者を巡る報道が盛り上がっている有り様だ。
一方、3分の1ずつが改選される上院では、その時の改選議席によっては、大統領の所属政党が有利になる。今回の中間選挙では、民主党の改選議席が14と、共和党の20議席を下回る。維持しなければならない議席が少ない分、民主党は有利である。
10年の悪夢の再現も
民主党には諦めの気配が漂う。12月初旬の時点で、民主党では19人の下院議員が再出馬しない意向を表明している。共和党の12人を大きく上回っているのは、選挙の行方を悲観した結果だといわれる。民主党でこれだけの数の議員が再出馬を望まなかったのは、オバマ元大統領が最初に迎えた10年の中間選挙以来である。
その10年の中間選挙で民主党は、下院で大統領所属政党としては第二次大戦後で最多となる64議席を失った。民主党が恐れるのは、オバマ氏が「惨敗」とうなだれた10年の悪夢の再現だ。
なぜ大統領は最初の中間選挙で負けがちなのか。選挙分析の専門家であるチャーリー・クック氏は、その理由を大統領の「やり過ぎ」に求める。特に議会で多数党を持った大統領は、有権者の許容範囲を超えて、大胆な改革…
残り1388文字(全文2488文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める