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2022年秋の中国共産党大会で、3期目入りの習政権が忘れた「初心」=湯浅健司

習近平総書記(前列中央)の3期目が確実視される(前回2017年の共産党大会で) Bloomberg
習近平総書記(前列中央)の3期目が確実視される(前回2017年の共産党大会で) Bloomberg

中国共産党大会 習政権が異例の3期目へ 基盤安定も統制強化の懸念=湯浅健司

 <2大政治イベント2>

 2022年の中国で最も注目されるのは、秋に予定される5年に1度の中国共産党大会の行方だろう。21年11月の共産党中央委員会第6回総会(6中全会)を成功裏に終わらせた習近平政権は、次の党大会を経て3期目に突入するとみられる。異例の長期政権は盤石な権力基盤を持つ一方、6中全会前から目立ってきた党内外の統制強化がもたらすリスクも抱える。

 共産党大会では、何が行われるのだろうか。17年10月の前回大会で習氏は、中国を建国から100年となる21世紀半ばまでに、総合的な国力と国際的な影響力が世界トップレベルの国家にする、という長期目標を宣言した。自らの名前を冠し「あらゆる活動を党が指導する」とした「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」も党規約に盛り込み、今日の強固な政権の礎を築いた。

 このように党大会では指導部の権威を高めるとともに政権運営の長期的な方針が示されてきた。また、最高指導部の顔ぶれも刷新される。17年に習氏は「チャイナ・セブン」と呼ばれる党政治局常務委員7人のうち、自分と李克強首相を除く5人の首をすげ替え、いずれも自らの人脈につながる人材を配置した。

 22年の党大会の最大の焦点は、習氏自身の人事である。通常は「2期10年まで」である最高位のポスト、党総書記を離さず、異例の3期目就任を決めるかどうかだ。6中全会で習氏は、中国共産党史上で3番目となる「歴史決議」の採択を主導した。建国の父である毛沢東、「改革・開放」路線を始めた鄧小平と並ぶ地位に、自らを権威付けた。これにより、3期目の続投は確実になったとの見方がもっぱらだ。

 習氏は前回の党大会で「35年までに社会主義現代化を基本的に実現し、35年から今世紀半ばまでに我が国を社会主義現代化強国に築き上げる」とした。これにより一部では、35年まで習氏が最高権力者の座にとどまるといった予測まである。その時、習氏は82歳。毛沢東が亡くなった時と同じ年齢だ。健康面も含めて、為政者として君臨し続けられるかは微妙だろうが、そうした推測が出るほど権力基盤は強固になったといえる。

 盤石な体制で3期目に入る習氏が、新たな任期の5年間、どのように中国を差配していくのか。党大会では、対米政策や台湾問題などの対処を含め、35年の長期目標達成を肉付けするような新しい指針を打ち出すのかも注目される。

2人の李氏と陳氏

 次の党大会では習氏を支える「チャイナ・セブン」の人事にも関心が集まる。誰が政治局常務委員となるのか、さまざまな臆測が飛び交って…

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週刊エコノミスト

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