経済・企業

国際会計基準がEV化を加速させるこれだけの理由=深尾三四郎

新興EVメーカー「リビアン」はアマゾン向けの配送用トラック10万台を受注した Bloomberg
新興EVメーカー「リビアン」はアマゾン向けの配送用トラック10万台を受注した Bloomberg

気候変動 国際会計基準が迫るEV化 温暖化ガスの排出量開示へ=深尾三四郎

 2022年は自動車の電気自動車(EV)化が一段と加速するとみられ、業界にとっては非常に重要な一年になるだろう。

 21年10月31日〜11月13日に英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、自動車業界にとってのサプライズも多かった。国際会計基準をまとめるIFRS財団は会期中、気候変動リスクの情報開示についての新ルールを22年6月までに制定すると発表。まとめ役となる国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を独フランクフルトに設置した。

 新たな情報開示ルールでは、工場の燃料燃焼などにおける直接的な温暖化ガス排出量を指す「スコープ1」や、他社から供給された電気の使用に伴う間接的排出量の「スコープ2」だけでなく、部品調達など取引網全体に関わる排出量「スコープ3」の開示を求める可能性が高い(図1)。

 企業の温暖化ガス排出量を測定する国際基準「GHGプロトコル」では、スコープ3を15のカテゴリーに分類している。原材料の調達や生産設備の増設、採掘や精製などのエネルギー活動のほか、調達物流や配送物流などの輸送時の排出量だけでなく、リース資産やフランチャイズ、投資といった下流域まで細かくカバーする。

 日本ではトヨタ自動車やホンダをはじめとする、グローバルに事業を展開する企業が国際会計基準を適用している。ISSBの新基準でスコープ3までの開示が求められることになれば、グローバルに事業展開する企業は金融機関や投資家などからの圧力を回避するために、使用する物流用車両のEV化などを加速させなければいけなくなるだろう。

 すでに、物流用車両のEV化に動き出している企業もある。米アマゾンを最大株主に持つ新興EVメーカー、リビアンは、アマゾン向けの配送用EVトラック10万台を受注している。国内では佐川急便が保有する軽自動車約7200台を順次EVに切り替える方針を示すほか、物流大手のSBSホールディングス(HD)も30年までに、協力会社と合わせて1万台のEVトラックを調達する。

 11月22日には、ヤマト運輸が日野自動車の小型バッテリーEV(BEV)を配達に使う実証実験を開始すると発表するなど、物流企業を中心に商用EVの導入機運が高まっている。こうした動きは22年にかけ、一層強まることが予想される。

日本と異なる欧米の思想

 日本ではEV化を進めることで、雇用が減少するとの意見が根強いが、欧米ではそうした発想はない。脱炭素化を進めることで新たな経済圏を作り、雇用創出を目指す欧米に対し、いつま…

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