経済・企業

S&P500は2022年、5400へと上昇を予想する根拠=平川昇二

Bloomberg
Bloomberg

22年前半は高値更新の米国株 S&P500は5400へ上昇=平川昇二

 <第2部 マーケット展望>

 2022年の米国株は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げまでの間、再び史上最高値を更新する可能性が高い。米国の景気や企業業績は若干減速するとみられるが、依然として高い伸びが見込まれ、株価はそれらを織り込んで上昇すると予想している。新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の確認で散発的な需要減退は起こりうるが、景気拡大局面を止めることができないだろう。

 株価上昇を予想するのは、次の五つの理由による。まずは、インフレのピークアウトである。図1は米国の消費者物価指数(CPI)とWTI原油先物価格、原油などのエネルギーは含まれないCRB原材料価格指数のいずれも前年同月比増減率の推移だが、過去を振り返ってみれば10年や17年の局面など、それぞれの指標がピークアウトしているタイミングは、ほぼ同じであることが分かる。

 米国のCPIは21年10月、6%超の高い水準に達したが、11月には原油、原材料価格は前年同月比で急落しているうえ、今後はさらなる低下も見込まれる。それにつれてCPIも低下すると予想され、景気好転の継続による需給の逼迫(ひっぱく)で物価押し上げ圧力が続いたとしても、CPIは22年の年央には3%へ低下すると予想される。

 次に、在庫循環の好転である。21年は高インフレや人手不足などによる供給制約が問題となった。しかし、米民間在庫は21年7~9月期まで3四半期連続で前期比マイナスとなっており、企業は半導体など部品が調達できれば、生産を拡大する可能性が高い。足元で上向いている米ISM製造業景況指数も今後、生産や雇用の改善を受けてさらに上昇していくだろう。

追加財政も下支え

 また、追加財政政策の影響もある。米下院で11月、総額1・75兆ドル(約200兆円)規模の気候変動・社会保障関連歳出法案が可決された。上院では今後、規模を縮小したうえで最終的には可決されると予想するが、規模縮小に伴って増税額も縮小すると見込まれ、すでに成立した1兆ドル規模のインフラ投資法ともセットになって、景気拡大を下支えすると考えられる。

 そして、雇用もゆっくりではあるが着実に好転する。足元では求人数が失業者数を上回っているにもかかわらず、雇用拡大が緩慢にとどまっているが、その要因は新型コロナの感染再拡大に対する恐怖と、好条件を求めて自発的な離職者が増加していることにある。こうした要因は時間の経過とともに解消するとみられ、雇用拡大が米国の消費を盛り上げる。

 また、横ばいで推移する労働参加率についても、早期退職によって労働市場には戻らない55歳以上の年齢層を除けば上昇しており、今後も同じペースで増加するならば、22年秋ごろにはコロナ禍前の水準まで回復すると予想される。FRBが雇用の一段の回復を利上げの実施条件としている点を考えると、ゆっくりだが着実に好転する雇用は、株式市場にとって好ましい環境となる。

 次に、大幅な金融緩和の実施がある。一部の投資家はテーパリング(量的緩和の縮小)の実施を「金融引き締め政策」として捉えているが、テーパリングとはFRBがリスク資産の購入額を減らすことであり、リスク資産の残高自体は依然として増加している。つまり、テーパリングは金融緩和の継続を意味し、景気や株価にはプラスの要因のままとなる。

実質FF金利はマイナス

 最後に、名目の政策金利(FF金利)からインフレ率を差し引いた「実質FF金利」の低下にも注目したい。実質政策金利は最近のインフレ上昇により、マイナスの水準…

残り1571文字(全文3071文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事