経済・企業

これから起きるかもしれないドル高の”巻き戻し”に気を付けるべき理由とは=高島修

2021年は米金利高、株高でもドル高が持続した Bloomberg
2021年は米金利高、株高でもドル高が持続した Bloomberg

米ドルの行方 米金利上昇でドル高は継続も 膨らみ続ける巻き戻しリスク=高島修

 2021年は年初には米ドル安になるとの見方が支配的だったが、予想を覆すドル高となった。ユーロや日本円など主要6通貨に対する米ドル相場を指数化した「ドル指数」は、年初から12月7日まで7・1%上昇している。22年も米ドル高が継続する可能性が高いとみているが、上昇余地は限られており、米株価の下落時などにドルが反落することも同時に念頭に置いておきたい。

 21年が米ドル高となった要因として、次の五つの点を指摘したい。

 一つ目は、米国など世界的なインフレ高進と、それに伴う米金利上昇である。米国でインフレが加速するにつれ、米金利も21年1~3月期に予想していた以上に早く、かつ急速に上昇した。そのため、新型コロナウイルス禍で資金の逃避先となっていた低金利の円やスイス・フランなどの通貨の買いポジションが一気に解消され、ドル買いに向かったことで市場心理が一変した。

 二つ目は、その米金利上昇を米株が耐えきっていることだ。金利が急激に上昇すると、株価は資金調達への懸念などから下落することが多いが、米S&P500株価指数はこの間も上昇を続けた。また、20年は米株価が上昇するリスクオンの局面では米ドル安となったが、21年はそうしたドル安は発生せず、特に年央以降は米株高の中でドル指数は上昇基調をたどるようにさえなった(図1)。

 三つ目のポイントは、そうしたリスクオンの環境下で原油・資源相場が予想以上に上昇し、日本のような資源輸入国の国際収支や交易条件(輸入物価で測った輸出物価で、下落すれば貿易に不利)の悪化が懸念されるようになったことだ。資源高は世界各地でインフレ懸念をあおり、米金利上昇を一段と促すことにもつながった。

米国への投資は減少

 四つ目は、世界的なサプライチェーンの混乱で日本の輸出回復が遅れ、輸出企業のドル売りヘッジが停滞したことである。日本の輸出企業は通常、為替リスクを避けるため、先物予約やオプション取引を通じてドルの主要な売り手となっているが、そうした売り手が不在となる中、日米の金利差拡大に伴うドル買い・円売り圧力がそのままドル高・円安につながった。

 最後に挙げたいのが、為替市場に長期投資家を中心とする相当な米ドル買いポジションと、短期筋主体に円売りポジションが同時に蓄積されていることだ。図2はシティグループの通貨ストラテジーチームが提供している「シティFXポジション指数」で、日本国内外の長期投資家(リアルマネー投資家)による米ドル売買と、ヘッジファンドなど短期筋による円売買を200日累積して示して…

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