経済・企業 世界経済総予測2022
原油100ドル時代の再来ありうる 低調すぎる北米シェール生産=岩間剛一
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2022年の原油市場は、新型コロナウイルスの感染状況によって引き続き大きく振り回されそうだ。ただ、コロナの感染状況が深刻化せず、経済活動が活発化すれば、米国の指標価格WTI原油先物で1バレル=100ドルを超える高値の再来も十分にありうる。そうした高値を見込むシナリオには、気候変動対策や米国のシェールオイル生産の停滞などさまざまな要因も絡んでいる。
コロナのパンデミック(世界的大流行)は、国際原油市場に甚大な影響を与えた。WTI原油先物は20年4月に史上初めてマイナス価格となったが、21年に入って世界経済の回復などとともに石油需要が増加すると、21年10月には1バレル=85ドル超と7年ぶりの高値を記録した(図1)。また、アジア向けの液化天然ガス(LNG)スポット(随時契約)価格も、史上最高値の百万BTU(英国熱量単位)当たり56ドルを付けている。
しかし、12月に入って変異株「オミクロン株」が確認されると、世界の石油需要が減少するとの見方から、WTI原油先物は20ドルも下落するジェットコースターのような動きを見せた。ただ、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非OPEC加盟国による「OPECプラス」の協調減産幅縮小(増産)ペースは鈍く、オミクロン株の脅威が薄れるという見方が広がるにつれ、12月中旬時点では72ドル前後の高値水準で推移している。
現在までの高値に至った要因として、需要面では経済活動の再開により石油需要が急増していることが挙げられる。国際エネルギー機関(IEA)の推計では、21年第4四半期(10~12月)の世界の石油需要は日量9890万バレルと、20年第2四半期(4~6月)の日量8310万バレルに比べ、日量1580万バレルも増加した。また、21年冬の寒波来襲や夏の猛暑により、暖房用、冷房用の石油、天然ガス需要が増えたことも影響した。
石油備蓄放出の“禁じ手”
供給面の要因では、OPECプラスの増産が小出しにとどまっていることが大きい。OPECプラスの12月2日の閣僚級会合では、バイデン米政権が強く増産を申し入れたにもかかわらず、22年1月以降も毎月日量40万バレルずつの協調減産幅緩和を維持し、追加増産を実施しないことを決めた。コロナなどの状況次第では、22年に入って原油の供給不足から供給過剰となる懸念があるためだ。
また、世界最大の産油国である米国が、脱炭素政策からシェールオイルの生産増加に慎重であり、21年11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)において、カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)を主張しながら、OPECプラスに…
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週刊エコノミスト
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