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EV用電池の地産地消を目指す自動車大手 コスト削減が鍵=坂上翔
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電池は地産地消 大手は重要部材を垂直統合 テスラ5割超のコスト削減へ=坂上翔
電気自動車(EV)向けの電池は、「地産地消」に向かっている。つまり電池を遠く国外から輸入するのでなく、EVの製造現場に近い場所で生産する動きが強まっている。欧州では、独フォルクスワーゲン(VW)が2030年までに六つの電池工場を提携先と稼働させる。6工場合わせた年間生産能力は240ギガワット時(GWh)となり、400万~500万台分のEV電池を供給できるようになる。ダイムラーも、30年までに欧州に四つの工場を稼働させる。
工場建設は電池メーカーとの提携が活用され、VWはスウェーデンでは電池製造のスタートアップ企業ノースボルトに出資し電池の供給を受け、ドイツでは出資した中国の電池大手の国軒高科と共同で工場を建設する。ダイムラーは多国籍のメーカー、ステランティスと仏エネルギー大手トタルエナジーズが既に設立した合弁の電池会社ACCに33%追加出資をし、電池の供給を受ける。
米国では、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーターが国内で工場を建設する。フォードは30年までに240GWhの生産能力が必要になる。このうち、140GWhを米国で賄う計画だ。米国では工場は合弁を通じて作られる見込みで、米中対立の間隙(かんげき)を縫うように、GMはLG化学、フォードはSKイノベーションといった韓国勢と手を組む。
日本では日産自動車が出資する中国系電池メーカーのエンビジョンAESC傘下のエンビジョンAESCジャパンが工場を設立し、24年から稼働。トヨタ自動車は、パナソニックとのバッテリー合弁会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズなどの生産能力を拡大する。
レアメタルを減らす
現在EV用電池は、日、中、韓の電池メーカーの寡占状態だ。そして、EV用のリチウムイオン電池の供給能力の約76%は中国にある(図)。
大手メーカーが、電池の地産地消を進めようとしているのは、生産増加に伴い、輸送コストをかけて電池を輸入するより現地生産した方がよいという判断がある。また、それ以上に、重要な部品である電池の品質、コスト、納期をコントロールしながら調達したいというメーカーのニーズや、電池サプライチェーンという巨大産業を自国内に置きたい各国政府の思惑が働く。
欧州委員会が17年に産業育成政策「バッテリー・アライアンス」を打ち出し、そこからノースボルトを育成してきたことや、現在電池の生産や研究開発の支援に8000億円規模の補助金を用意していることから、国策として力を入れていることが分かる。日本も負けずと、先端電池工場の建設を支援する新たな補助金を創設する。
電池の地産地消には、二つの課題がある。一つ目は部材の安定調達だ。20年におけるEV用リチウムイオン電池の生産能力は747GWhだが、25年には3倍以上の249…
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週刊エコノミスト
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