投資・運用

Q12 金融所得課税が強化されたら? 個人の運用にも株価にも影響大=大山弘子

    「金融所得課税」のあり方が議論になっている。金融所得課税とは、株式などの譲渡益や配当、利子などの金融所得に対する課税を指し、税率は基本的に一律20%(所得税15%、住民税5%)だ(2037年までは復興特別所得税も課税)。他の所得とは分離して課税される「分離課税」だが、この税率の引き上げや、他の所得と合算して課税する「総合課税化」が主張されている。

     現行の所得税制は、会社員などの「給与所得」や個人事業主などの「事業所得」は、「不動産所得」や「一時所得」などと合算したうえで、所得金額に応じて10~55%(所得税・住民税合計)の累進税率が適用される「総合課税」となる。ただ、高所得層ほど所得に占める金融所得の割合が高い傾向にあり、総合課税の税率よりも金融所得の税率が低い現象が生じている。特に、1億円を超す所得層で税の負担率が低下する現象は“1億円の壁”と呼ばれ、与党が昨年12月にまとめた22年度の税制改正大綱でも「金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある」と明記された。

    収益に大きな差

     金融所得課税が強化された場合どうなるのか。日本総合研究所の蜂屋勝弘上席主任研究員によると、分離課税のまま税率を引き上げる場合、高所得層の負担率の逆進性を解消するには、少なくとも35%超への引き上げが必要になるという。ただ、大幅な税率引き上げは一般の個人投資家にも幅広く影響が及ぶ。また、仮に総合課税化された場合、累進税率が30%以上の所得層は、金融所得の税率が30~55%にはね上がる。

     増税が投資の収益に与える影響は大きい。図1は、運用益が100万円だった場合の税引き後の運用益と、税引き後の利益を100万円にするために必要な運用益を試算したものだ。もし、運用益への課税が55%になった場合、税引き後の利益は45万円。税引き後の運用益を100万円にするには、実に222万2223円もの利益を上げなければならなくなる。

     税負担が重くなった場合、投資意欲が減退したり投資資金が税負担の軽い国へ流出したりする可能性を指摘する声もある。いずれも株価にはネガティブだろう。これに対し、累進税率が10%未満の所得層は、総合課税化された場合は金融所得の税率が下がることになる。財務省によると、納税者の8割強が適用税率10%以下だ。税率が下がることで、この層が資産運用で恩恵を受ける可能性は高い。

     ただ、上場株…

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