経済・企業 世界バブル
低金利政策が資産バブル形成 中国5.1倍、英2.6倍、仏2.3倍=松田遼
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2008年のリーマン・ショックによる世界金融危機を端緒として各国が採用した低金利政策に米国では、ようやく終止符が打たれようとしている。
この長きにわたる各国の低金利政策は、果たして各国経済の健全な成長に貢献しているのか。また、今後、米国によるテーパリング(資産買い入れの縮小)と利上げによる金融の正常化を迎えていく中で、世界経済にどのような影響が生じていくのだろうか。
設備投資には向かわず
これを別の視点で見れば、「世界の富は生産的に利用されているのか」という問いかけができる。
この問いに対してマッキンゼー・グローバル研究所は、21年11月に「グローバル・バランスシートの膨張(The rise and rise of the global balance sheet)」という調査リポートで「否」と答えている。
このリポートは、主要10カ国(米州3カ国〈米国、カナダ、メキシコ〉、アジア太平洋3カ国〈中国、日本、オーストラリア〉、欧州4カ国〈英国、ドイツ、フランス、スウェーデン〉)のみを対象としたものだが、10カ国の国内総生産(GDP)の合計は世界全体の6割を占めている。リポートで注目される点は、以下の通りだ。
(1)グローバル正味資産
過去20年間(00~20年)、グローバルで(金融資産を除く)正味資産(対象10カ国)は150兆ドルから520兆ドルへと3倍超に膨張している。現在、正味資産(520兆ドル)の約半分が住宅不動産(土地を含む)で、その約2割が企業、政府が保有。正味資産全体の約7割が不動産で占められている。インフラや機械・設備などは約2割にとどまる。
(2)資産価格の高騰
収入に対する長期的(1970〜99年)な資産価格の平均に対して、現在の資産価格は50%ほど上回っている。つまり、過去20年において金融資産を除いた正味資産ベースでも世界のバランスシート(貸借対照表)は急膨張しているが、それは多くの国では不動産投資が主導したものだ。
各国の低金利政策の下で、不動産をはじめとした資産価格は、インフレ率を超えて上昇。個人間では、住宅不動産を持つ者と持たざる者との間で、富の格差が拡大している。その一方で、製造設備など生産活動に寄与するものへの投資が十分とはいえない。
日本のみ2割下落
住宅を持つ者と持たざる者の富の格差は、どの程度のものか。
マッキンゼー・グローバル研究所の同リポートでは、過去20年間における10カ国の住宅価格の増加率が紹介されている。そのデータを基に、ここでは主要6カ国(GDPの規模順では、米国、中国、日本、ドイツ、英国、フランス)について、20年の住宅価格が00年に対して何倍となっているか指数化した。
最大は中国の5・1倍だ。英国2・6倍、フランス2・3倍など2倍前後が続く。中国の住宅不動産価格の高騰が、いかにすさまじいものだったかが、わかる…
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週刊エコノミスト
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